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2008年8月 3日 (日)

NHK「たったひとりの反乱」を見て

7月30日のNHK「たったひとりの反乱」を録画して見た。
昔から「たったひとりの・・・」というフレーズに弱いので。。。

面白かった。2001年の「雪印乳業による牛肉偽装事件」(BSE問題で国産肉を補償金(税金)で買い取るとした政府の方針を悪用して、安い輸入肉を西宮冷蔵の倉庫の中で国産肉と表示された箱に移し替えて、政府に高額で購入させようとした)で水谷洋一さん(兵庫県の西宮冷蔵の社長)が実名告発したときの前後をドラマ仕立てで、水谷さん本人がドラマの途中で何回かインタビューに応じるという形で進められた。
この告発が切っ掛けで、雪印乳業は解散してしまうのだが、その直後から、西宮冷蔵も監督官庁から2週間の業務停止命令(西宮冷蔵の従業員が雪印乳業から要求されて書類の虚偽記載をしていたため)を受けたり、多くの顧客企業から取引を停止されたりして、いったんは廃業してしまった。しかし、その後、発奮して、長男と2人で、本を出して街頭で本を売りながらカンパを集めたりして(テレビで紹介されて全国から資金が集まった)、会社を再建させた。昔の従業員も帰ってきた。

番組を見て、改めて社長の水谷洋一さんは、たった一人で決断のできる、すごく勇気のある方だと思った。こういう、個人や零細企業が大企業・大組織と対決するという話は個人的に大好きなのだ。
僕自身、今、個人発明家として、大企業と対決するという「たった一人の戦い」の準備をしているところなので。

ところで、ここからは追記ですが。。。
番組では、取引を停止した多くの顧客企業を、守旧派のような立場で捉えていた。

多くの人も同じでしょう。例えば、「取引先は次々に契約を打ち切って、西宮冷蔵を苦境に陥れました。告発するような危険な業者は排除したいという業界団体の圧力と、そこに天下りを送り込んでいる官庁の意向が反映している疑いを、濃厚に感じさせる成り行きです。」(志村建世プログより)というような意見が常識的なところだろう。

確かに、そういう面はあったのだろう。顧客企業の中には、「零細企業の分際で雪印乳業などのエスタブリッシュメントに弓を引くなんて、身の程を知れ!」なんていう意識で取引停止をした会社も多かったのかもしれない。

ただ、顧客企業が取引を中止したということに関しては、僕は番組を見てて別の感想を持った。僕も自営業で商売人なのだが、純粋な商道徳や契約の問題として考えて、「たとえ法を(ある程度)犯しているような顧客でも、顧客の秘密は守るという方針の会社に頼みたい(だから、顧客を告発するような会社とは取引を停止したい)」という論理からなら、取引停止という行動も理解できるのだ。

例えば、もし自分が殺人犯で、裁判になって、弁護士に「実は殺っちゃったのだが、やってないという線でお願いします」と頼んで、その後、その弁護士が「正義感」から「実は殺したと本人から聞きました」とマスコミに発表したらどうだろうか? もちろん、こういうことは守秘義務があるから在ってはならない話なのだが(弁護士としては、嫌だと思ったら、受任を辞退すればよい、もちろん秘密は墓場まで持っていくべきだ)。

これは2chなどの掲示板の書き込みも同様で、個人の秘密が保持されて匿名性が確保されていると信頼するからこそ本音の発言ができるのであって、それがどんどん氏名などがばらされるとなると、誰も発言できなくなる(プロバイダー責任法により、プロバイダーは裁判所の令状が出た場合のみ警察に発言者の氏名などを提出する必要はある)。

スイス銀行だって、顧客から預かった金はそれが脱税など違法な行為で得たものかどうかに拘わらず徹底的に秘密管理して守ってくれる(国際条約などにより資産凍結などされたら別)。だからこそ世界中から金持ちがスイス銀行に金を預けるのだろう。

このように、弁護士の場合は依頼人の秘密、プロバイダーの場合は発言者の個人情報、銀行の場合は預かった金の出所などの秘密、倉庫会社の場合は預かった荷物の秘密を、顧客のために徹底的に守るのが「プロ」というものだ。

だとすれば、「自分の顧客の秘密(たとえ違法なものであっても)をばらすような会社とは安心して付き合えない」という論理はある程度もっともだという気がする。

もちろん、倉庫に預かった荷物が麻薬とか拳銃だったら直ちに告発すべきだろう(弁護士の例でもテロの計画を聞いたら直ちに公表すべきだろう)。しかし、この事件のように詐欺罪のような重要度も緊急度もやや低い犯罪の場合は顧客から預かった荷物の秘密をばらしてまで告発すべきかどうか、かなり微妙と思う。

ただ、この事件では、ややこしいことに、西宮冷蔵の従業員が雪印乳業から依頼されて書類の虚偽記載を(社長も知らないまま)既にやってしまっていて、そのままだと西宮冷蔵も詐欺罪の共犯になってしまう恐れがあったようなので、これもからんで難しい問題になったのかなあ、と思う。

いずれにせよ、こういう場面での守秘義務に関しては、従業員よりも取引先の方が重いと思う。従業員は、いわば身内だから、「法令違反の命令に対しては従う必要がないだけでなく、むしろ、内部の人間として積極的に告発して会社を正しい方向に矯正させる権利と義務がある」と思うからだ。これに対して、取引先にはそのような「矯正させる権利と義務」はない(そもそも、そういう役割がない)ので、「守秘義務」の方が相対的にずっと大きくなると思うのだ。

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コメント

わたしも「発明」とは関係のない記事を、ついつい書いてしまいます。

政・官・法・大企業・マスコミの癒着で動いている日本 腹立たしい思いがするのは、わたしだけではないようですね。

ひとりでも多くの人が、日本の会の危機について気が付いて欲しいと思い、わたしも書き続けたいと思います。

投稿: むーじょ | 2008年8月 4日 (月) 05時58分

こんにちは むーじょさん
ほんと、ついつい、関係ないこと書いてしまいます。
日々、ムカついたりしたことでも、そのとき書いておかないと、次の日にはまあいいかとどうでもよくなってしまったりするので、これからはなるべく書いていこうかなと思っています。
まあ、お互い頑張りましょう。

投稿: komo | 2008年8月 4日 (月) 10時03分

なるほど難しい問題ですね。実は西宮冷蔵の社長さんは確か同窓にあたる方で大変に気の毒に思っていました。消費者の利益は踏みつけにされ、いつも大企業と官庁だけ逃げきってしまうのが日本の悲しい実情です。社会正義のために内部告発しても国も含めて誰も告発者を保護してくれません。どころか国の出先が告発者を売るようなマネをしています。もう日本全体が制度披露をおこしているとしか言いようがありません。こういうことになるのも我々国民が政治に無関心で選挙にもいかず、腐敗した自民党を野放しにしているからです。日本はパソコンに例えるのならHDDがクラッシュしかかっています。買い替える時期にきているのです。しかし今の我々の持ち金では買えるパソコンは民主党くらいしか残っていません。どんなに遅くとも来年9月までにある総選挙では民主党にいれるつもりです。

投稿: ツシマ | 2008年8月 4日 (月) 11時07分

ツツマさん こんにちは
今、若者の間で「蟹工船」が読まれていると聞きましたが、まあ僕は読んでませんけど^^; 政治にも、もっと眼を向けていく必要はあるし、そういう人も増えていくのではないでしょうか。

投稿: komo | 2008年8月 4日 (月) 11時18分

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