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2009年1月13日 (火)

特許訴訟の提訴件数が減っている件(日経の記事より)

追記(2009/6/7): 2006年から2008年の3年間の東京地裁及び大阪地裁の特許侵害訴訟の判決125件の中で、原告(特許権者側)が勝訴した割合(勝訴率)は24%、同125件の中で、判決で特許権が無効とされた割合は49%。要するに、原告(特許権者側)の敗訴率は約75%、原告の特許が無効だと判断された率は約50%(ということは、原告が敗訴した理由としては、特許が無効とされたことによるものが、敗訴全体の約67%ということになる)、ということ。

特許訴訟の提訴件数が減っている件について、2009年1月12日付け日経新聞に特集記事が出ていた。要約すると、次のとおり。

1 2007年の地裁レベルの提訴件数は、156件で、3年前より3割減った。

2 その原因は、特許権者にとって特許訴訟が割に合わない、使いずらい制度になっていること。すなわち、裁判所が特許の有効性判断をできるとした2000年のキルビー最高裁判決、これを受けての2004年の特許法104条の3の「権利行使制限の抗弁」の創設により、特許権者は侵害訴訟を提起すると、裁判所の訴訟と特許庁の無効審判との双方で特許の有効性を認めてもらわないと勝てないという不利な制度、逆にいうと被告にとって非常に有利な制度になった。

3 しかも、特許権者は、侵害訴訟を提起したために、敗訴するだけでなく特許が無効とされてしまうリスクも大きくなった。以前から、原告の敗訴率は8割(勝訴率は2割)のままだが、原告が敗訴したときの「敗訴するだけでなく特許も無効とされてしまった率」は、ここ2-3年で従来の3割から6割に上昇した(※これは、つまり、もし侵害訴訟を提訴したら、原告は、8割は負けるし、約5割は負けるだけでなく特許も無効にされて踏んだり蹴ったりの状態になりますよ、ということだ)。

4 また、いったん勝訴判決が確定しても、その後、被告は何回でも無効審判請求を繰り返しできるので、それが成功して無効審決が確定すると、再審請求をして、確定勝訴判決を覆すことが可能になっている(※もし確定判決が覆ったら、原告はいったん獲得した損害賠償金を年利5%の金利を付けて返還しなくてはならない!)。

5 特許の有効性判断の争点の中心は進歩性判断だが、進歩性判断は従来より厳しくなっている(※ここが最大の問題だろう)。

6 知財高裁の飯村敏明判事は、「今の制度は被告にとって非常に有利な制度(原告にとって不利な制度)になっている」として、バランスを取り戻すため、「裁判所と特許庁とのダブルトラックによる紛争解決制度を見直すべき」、「紛争を1回の手続で解決し、いたずらに繰り返される無効審判で特許権者が疲弊しないようにすることが必要だ」として、次の2つを提案している。(1)無効審決の効力は既に確定した侵害訴訟の被告には及ばないようにすること、(2)一定期間後の無効審判請求を制限すること。

7 この記事では、2000年10月に確定した「生のりの異物分離除去装置」の特許侵害訴訟で原告勝訴判決が確定した後に敗訴被告が何回も無効審判請求を繰り返して、特許無効が確定し、再審請求が認められて確定勝訴判決が覆ってしまった事件が紹介されてて、これは、現在、原告側が最高裁に上告受理申立て中とのこと。

※私見として、上記6(1)の原告勝訴判決確定後の特許無効による再審請求を制限することは、特許法104条の3第2項の趣旨(訴訟遅延を防ぐ)から考えて解釈論として可能ではないか、と思う。最高裁でどういう判決が出るかは分からないが。

ただ、最高裁は、最近、原告敗訴判決の確定後に敗訴原告が何回も訂正審判請求を繰り返して訂正が確定した後、その訂正の確定を理由として再審請求をした事件で、特許法104条の3第2項の趣旨(訴訟遅延を防ぐ)から再審請求を制限する判決を出している(最判平成20年4月24日平18(受)1772「ナイフの加工装置事件」)。

この最高裁判決は被告側に有利な判決であるが、これとのバランスをとるためにも、原告勝訴判決確定後の特許無効の確定を理由とする再審請求を制限する最高裁判決がもし出れば、この日経の記事も大きな意味があったということになるだろう(ただ、上記の最高裁判決は、訂正が確定した場合は特許無効が確定した場合とは異なって・・・というような言い方をしているので、あまり期待できないかな)。

追記(2009/5/7):最近の統計:

2006-2008年の3年間の東京地裁及び大阪地裁の特許侵害訴訟の判決125件の中、特許権者の勝訴した割合(原告勝訴率)は、24%(約4分の1)。また、

2006-2008年の3年間の東京地裁及び大阪地裁の特許侵害訴訟の判決125件の中、特許権者が敗訴し且つ特許が無効とされた割合は、49%(約半分)

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