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2009年1月 7日 (水)

特許法改正 特許庁の真の狙いは?

2009年1月5付け日経新聞に特許法改正の話が載っていた。改正は2-3年先らしいが、特許法見直しの検討項目として次の7件が載っていた。

1 保護の対象となる「発明」の定義の見直し

2 「差止請求権」の放棄など技術革新の促進に向けた制度づくり

3 「職務発明規定」の見直し

4 審査基準の法制化に向けた検討

5 迅速で効率的な紛争解決方法の検討

6 審査の迅速化と出願者のニーズへの対応

7 分かりやすい条文づくり

記事では、上記の1,2,3を中心に大きな改正になりそうと書いてあった。上記の4以降については全く記事の本文には載っておらず、「検討項目」の一覧表の中に載っているだけだ。

しかし、僕はこれを見て直ぐ、特許庁の真の(裏の)狙いは「4 審査基準の法制化」にあるのではないか(それ以外は、いわば目くらましの意味しかない)、と直感した。もちろん、ただの直感で証拠は全くないし、僕の「全くの勘違い」ということもある。

ただ、なぜこのように直感したかというと、1-7の検討項目の中で、この4だけが異色なのだ(だから、違和感を持った)。

つまり、この「4 審査基準の法制化」を除く全ては、特許法のユーザー(出願人や発明者や特許権者)の利便性を高めたり一般の利害関係者(特許権者や発明者からの権利行使を受ける側の企業など)と権利者側との利害を調整するためのものだ。これに対して、この「4」だけは、ユーザーや一般の利害関係者とは関係ない、特許庁と知財高裁(及び最高裁)との関係に関するものだ。

今の裁判所の判例は、「審査基準は特許庁の内部で作成・運用されている審査の指針に過ぎず、法規範性はないから、裁判所は全くこれに拘泥されない」という立場だ。だから、審査基準は、判例に適応するように作られねばならないし、判例が変更されればそれに後追いするように審査基準も速やかに変更されている。

特許庁はそれが面白くないということなのだろうか?

しかし、そもそも、審査基準は特許庁の職員という行政職員が内容を決めるもので、国会で審議を受けたものではないから、裁判所が審査基準に拘束されないのは憲法の三権分立から当然のことなのだ。

つまり、審査基準は、特許庁による行政行為の一部と言ってよいものだから、裁判所の違法判断の「対象」となるものであって、裁判所が従うべき「基準」となるものではない。審査基準は、その内容が特許法などの解釈(これは裁判所の専権事項)から見て違法なものか適法なものか、常に、裁判所による判断にさらされている、というのが現状だし、それは極めて正常な姿だ。

それが、審査基準が法制化されると、立場が全く逆転して、審査基準は裁判所が「従わなくてはならない基準」(裁判の基準=法律)となってしまう。つまり、裁判所が特許庁(審査基準を作る側)よりも「下」になってしまう。

もちろん、法制化となれば、審査基準は国会の審議と可決を経るという手続に形式的にはなるのだろうが、特許審査の細かい内容を国会議員が理解できるはずがないから、国会では「細かい内容(細則)は特許庁(の職員)が作る省令に一任する」というような法律が出来るだけだろう。だから、そうなるとやはり、形式的にはともかく、実質的には、裁判所が特許庁(審査基準という省令を作る側)よりも「下」ということになってしまうだろう。

憲法の観点(司法による行政の統制、裁判所による国民の権利の救済)からみて、かなり大きな問題だと感じた。

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