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2009年1月10日 (土)

特許法改正-審査基準の法制化について

2009年1月7日に特許法改正について書いたが、これに追記したいことを幾つか思いついたので、ここで纏めておくことにした。

1 前回の議論は「審査基準の法制化=審査基準の法令への格上げ」という理解を前提にしました。多分これでよいと思う。「審査基準の法制化=審査基準の特許庁内部での策定の過程・手続の法制化」などではないと思う。

2 「審査基準の法令への格上げ」をもしやるとしたら、「省令」の形だろうか? 省令とは、経済産業省(特許庁もこの一部)など各省の大臣が制定する命令だ(「特許法施行規則」も省令)。省令は、法律から委任を受けている限りは、「法律と同等の効果」を有する。つまり「法令」には法律だけでなく政令・省令も含まれる。国会の審議を受ける「法律」の形式では機動的な改正ができない等の理由で、規定の根幹に関わる部分のみを法律(例えば特許法)で規定し、詳細な手続方法などについては省令(例えば特許法施行規則)や政令で規定する、という役割分担が行われている。

3 「審査基準が法令に格上げされる」とどうなるか?

 今の拒絶審決取消訴訟の中で「特許法の規定がおかしい」と主張すると、違憲審査は別として「それは立法論だから国会に言ってください」となる(裁判所は、「特許法の規定が妥当かどうか」を判断できず「特許法の規定の解釈」をすることしかできない)。他方、審査基準は法規範性を有してない(「偏向フィルムの製造法事件」平成17年11月11日知財高裁判決)ので、裁判の中で「審査基準が特許法の規定や解釈に適合しておらずおかしい」と主張するのは当然に可能(というか、審査基準のことなどそもそもお呼びでないというか無視してよい)。

それが、審査基準が法令(省令)に格上げされると、訴訟の中で「審査基準がおかしい」と主張すると、「それは立法論だから国会に言ってくれ」ということになるだろう。つまり、裁判所は「審査基準の規定が妥当かどうか」を判断することはできなくなり、「審査基準の規定を解釈すること」しかできなくなってしまう。それだけ、裁判所が国民の権利を救済できる範囲が狭くなってしまう。裁判所で出願人が自分の特許を受ける権利について特許庁と争える範囲が狭くなってしまう。

4 国民の権利義務に関係する規範は国会による「法律」の形式で定めることが憲法上要請されている(通説? なお、特許法施行規則は手続に関するもので権利に関するものではないから省令でも問題ない)。特許審査基準は「出願人に特許という権利を付与するかどうかを決めるための基準」であり、「国民の権利義務に関係する規範」であるから、国会の審議を経る「法律」という形式によるべきで、「省令」という形式で定めることは憲法上の要請から許されない、と思う。他方、専門的で細かすぎる(数百ページはある)審査基準そのものを国会で議論することは無理であろう。したがって、結局、「審査基準の法制化」は妥当でない(省令による場合)し、難しい(法律による場合)と思う。

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