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2009年2月12日 (木)

「かんぽの宿」疑惑の法令違反と株主代表訴訟の可能性

山崎元さんのブログで、中立的・客観的な立場からこの問題が論じられていた。コメントが今のところ21件ついている。僕も書いておいたが、コメントの全体を見ると、入札が怪しいし疑惑があるという人と、民間企業の問題だから国会などでの追及は郵政民営化にマイナスだという人とが、半々という感じだ。テレビなどのマスコミも、こういうふうに国民の間で意見が半々に分かれていてはどちらのスタンスでやったらいいか分からないという感じではないだろうか。それが、ワイドショーなどで取り上げない原因の一つかもしれない。

結局、入札(随意契約)の過程での疑惑や不正を示すモノが出るかどうかによって、世論が動くのだと思う。今はまだ、はっきりと、どちらとは言いきれない段階だ。世論が疑念の方に傾けば、ネタは多いので、ワイドショーなどでやりはじめるだろう。山崎元さんは、鳩山議員は総務相の前が法務相だったから何か報道されていない情報を掴んでいるのかも、と書いていた。

以下では、頭の体操の面はあるが、入札過程の「疑念」の中身として、具体的にどういう「法令違反」があるかを考えてみたい。今のところ、次の2つが考えられる。

1 最低6億円の成功報酬契約に関する取締役の利益相反などの可能性

yahooニュースによると、日本郵政とアドバイザーのメリルリンチ日本証券との業務委託契約では、毎月1千万円(年1億2千万円)の手数料と別に、「売却価格の1.4%か、この額が6億円を下回る場合は最低6億円」を成功報酬として支払うという取り決めがあったらしい。

この成功報酬の取り決めを分析すると、「売却価格の1.4%」が原則で、「この額が6億円を下回る場合は最低6億円」の部分は例外ということになると思う(なぜなら、もともと成功報酬というのはそういうもので、出来高制が原則で、成功報酬の最低保証というのは、「最低これくらいもらわないとペイしないのでやってられない」という最低限の額のはずだから)。

そして、「売却価格の1.4%」が「最低保証の6億円」を超えるためには、今回のかんぽの宿の売却価格は、429億円以上でなくてはならなかった(売却価格が429億円に達して初めて、その1.4%の6億円が成功報酬となるから。429億円×1.4%=6億円)。

とすれば、この成功報酬の取り決めをしたときは、日本郵政とメリルリンチ日本証券との間で、「今回の売却価格は429億円を超える現実的可能性が高い」という共通認識があったはずだ。

なぜなら、もし、「今回の売却価格はどうせ429億円以下だろう」ということなら、メリルリンチ日本証券としては、売却価格が429億円だろうが300億だろうが100億だろうが10億だろうが、同じ最低6億円の成功報酬を受け取れるので、全くやる気・モチベーションが湧かないことになるが、そのような全くやる気・モチベーションを出させないような成功報酬の取り決めは、全く不合理で意味がないからだ。

つまり、成功報酬というのは、アドバイザーにモチベーション・やる気を高めてもらうためのものだ。日本郵政とメリルリンチ日本証券は、「いろいろアドバイザーとしての仕事は大変だろう、最低保証の6億円の成功報酬ではトントンか釣り合わないだろうね、でも、頑張れば、今回のアドバイザーの仕事は6億円を優に超える成功報酬を得られる可能性がある(=今回の売却価格は429億円を優に超える可能性がある)、だから、やる気を出して頑張ってね」という前提に立って、そのような成功報酬の契約をしたと見るのが常識的・合理的だ。

以上のように、本件のような成功報酬の取り決めをしたということは、その取り決めをした時点では、日本郵政とメリルリンチ日本証券とは、「今回の売却価格は429億円を超える現実的可能性が高い」という共通認識を持っていたはずだ。その429億円が妥当だとした根拠は何だったのか。そして、それなのに、何故、最近になって、日本郵政は「429億円ではなく109億円で妥当」と言い出したのか。また、メリルリンチ日本証券はこれについてどう思っているのか。それを知りたい。そこらへんには、第三者のための意図的な安売りなど、何らかの法令違反の事実が転がっている可能性がある。

また、他方、本件のような成功報酬の取り決めをした時点で、日本郵政とメリルリンチ日本証券が「今回の売却価格は429億円を超える現実的可能性が高い」という共通認識を持っていなかった、つまり当初から「売却価格はどうせ109億円程度くらいだろう(429億円なんてとんでもない)」という共通認識を持っていた、という場合はどうか?

この場合は、そういう「売却価格はどうせ109億円程度くらいだろう(429億円なんてとんでもない)」という共通認識を持っていながら、なぜ、成功報酬を「売却価格の1.4%」とする取り決めをしたのか、が問題となる。つまり、「売却価格はどうせ109億円程度くらいだろう(429億円なんてとんでもない)」という前提の下で「最低6億円の成功報酬」を保証するのなら、「売却価格の1.4%」という規定は、全く無意味だ。

なぜなら、「売却価格の1.4%」の成功報酬が6億円を超えるのは、売却価格が429億円超にならないと不可能だから。つまり、売却価格が429億円超になる現実的可能性がないならば、「売却価格の1.4%」を成功報酬とする規定は全く無意味だ。それなのに、なぜ、このような不可能で無意味な「売却価格の1.4%」という規定を、「売却価格はどうせ109億円程度くらいだろう(429億円なんてとんでもない)」と思いながら、あえて契約の中に入れたのか、が問題となる。

つまり、この場合、「売却価格はどうせ109億円程度くらいだろう(429億円なんてとんでもない)」と認識しながら、その109億円程度から見ると不合理に高い「最低6億円の成功報酬」をメリルリンチ日本証券と契約したのは、「売却のアドバイス」だけでなく「オリックスに売却するためにうまくやってくれ」などの付加的なサービスをしてもらいたいと思っていたとか、それはなくても、日本郵政にとって損害が生じる成功報酬の契約をメリルリンチ日本証券の利益のためにしたという、取締役の利益相反や背任(法令違反)に該当する事実がある、ということになると思う。

追記:昨日付けの毎日新聞の記事によると、「日本郵政はオリックス不動産への一括譲渡を白紙に戻す方針で、正式に撤回されればメリルには手数料以外は支払われない」らしい。しかし、外資系のメリルリンチが本当にそんな腑抜けた契約をしたのだろうか? よく分からない。

2 入札の手続規定に対する違反の可能性

入札過程の「法令違反」としては、利益相反などの可能性とは別に、もう一つ、入札の手続規定に従っていなかったのでは、という可能性がある。

社民党の保坂議員のブログで見たが(何日の記事か忘れた)、日本郵政における入札又は随時契約の進め方は、総務省に届け出た規定によることが義務付けられているらしい。今回の入札の進め方はどうみても不可解な部分があるので、厳密に見ていけば、この手続規定に違反している部分は何箇所かあると思う。

以上のような法令違反がもし見つかれば、取締役に会社の損害(メリルリンチ日本証券への6億円の成功報酬もその一つだ)を賠償させる株主代表訴訟も可能になると思う。この場合、政府が株主だから、民主党、社民党、国民新党などは、日本郵政の取締役に対する株主代表訴訟を選挙公約に掲げることもできるのではないだろうか。

追記(2009/2/20):

ダイヤモンドオンラインの弁護士・永沢徹さんによる2009/2/20付けの記事「「1円でも高く売る」の信念なし アドバイザーのカモにされた「かんぽの宿」」に、上記の僕が今回の成功報酬について分析した内容とほぼ同じことが書かれていた。参考までに一部引用しておきます。

いくらで売っても6億円を保証!? アドバイザーとの契約に問題あり

 ・・・メリルリンチは、入札のアドバイザリー契約料として、月額1000万円の定額報酬に加え、売却価格の1.4%の金額を成功報酬として受け取る契約になっていたといわれている。しかしこの成功報酬というのがクセモノ。もし売却価格の1.4%が6億円を下回った場合には、6億円は必ず支払うと“保証”されていたのだ。たとえいくらで売ったとしても、である。これでは成功報酬とはとてもいえない

 (中略)・・・通常、選定されたアドバイザーは、実際の売却価格が、自分たちが提示したターゲットプライスを上回らなければ、もらえるのは毎月の定額報酬だけで成功報酬は得られない、という仕組みとなっている。まさに売却価格をどこまで引き上げることができるかが、アドバイザーの“腕のみせどころ”となっているのだ

 しかし今回のメリルリンチにおいては、そのインセンティブが全く働いていない。成功報酬である6億円から逆算すれば、今回のターゲットプライスは、本来428億円であるべきである。だが実際の売却価格は109億円。その金額の乖離はあまりにも大きい。もし、この109億円が現時点で適正な額だとするならば、メリルリンチが受け取る成功報酬はせいぜいその1.4%の1.5億円程度で十分である

 にもかかわらず、いくらで売っても最低6億円の成功報酬を保証するという契約を結んでいたこと自体が驚きである。これでは何のためにアドバイザーを雇ったかわからない。1次入札で3分の2以上が辞退するような入札スキームを作ったアドバイザーに意味があるのだろうか。少なくとも入札結果を見る限りには、メリルリンチを起用したメリットはまったく見出せない。」

・・・以上の論述を見ると、上で僕が書いた意見とほとんど同じに見える。プロの弁護士の成功報酬についての見方だから、信頼性は高いと思う。極めておかしな契約内容であることだけは確かだろう。

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