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2009年2月17日 (火)

「かんぽの宿」の議論の整理

「かんぽの宿」の問題は、郵政民営化そのものに賛成か反対かと、かんぽの宿の売却問題としてオリックス不動産への売却は妥当と考えるかどうかという2つの議論がからんで錯綜している。

両者は別の問題として別々に議論すべきだという人もいるが、いや、両者は密接不可分で分けて論じられないという人もいる。

郵政民営化に反対の人の中には、かんぽの宿の問題は郵政民営化の本質(国民の資産を米国資本に差し出すこと=新しい改革利権)を示すものだという人もいる。逆に、郵政民営化に賛成の人の中には、かんぽの宿の問題は郵政民営化に反対の抵抗勢力が既存の利権を取り返そうとしているだけだという人もいる。

しかし、今までの方々での議論を見てて、次の3つについては、大体のコンセンサスが得られつつあるのではないかと思う(まだそこまで行ってない?)。

1 「民間の取引に大臣が口を挟むのはおかしい」というが、国民の財産が不透明な取引で安く売却されようとしてても口を出してはいけないのか?

2 「収益還元法によれば売却価格(109億円)は取得価格(2400億円)とは関係ないから、オリックス不動産の109億円が入札で一番高かった以上それが適正な価格なんだ」というが、競争入札ではなく談合だったとしても、一番高いならそれで文句言うなということか? それなら、自治体の談合でも一番高い人に行けばそれが適正だということになるが。

3 「今のまま毎年40億円も赤字を垂れ流すならさっさと売った方がいい」というが、最近は赤字が少なくなってるし、赤字といってもその中身が減価償却費によるものでキャッシュが回っているのなら、キャッシュの外部調達の必要はないのだから全く問題ないのでは?(追記:まだ財務諸表は公開されていないので赤字の中身は予想に止まる。ただ、サンデー毎日2/22号は次のような発言を引用している「会計基準の見直しで減価償却期間を60年から25年にしたため、帳簿上、年度ごとの赤字額が増大しましたが、・・・」。また、60年償却を25年償却に変更したことが、見かけ上の収支悪化をもたらし、このことが固定資産税評価科学の7分の1という低価格査定につながったと指摘されている。)

また、この問題に関しては、個別の問題に対して抽象的な理論「だけ」で答えようとする傾向が見られる。例えば、「政治家は機会費用の概念もしらない経済オンチだから、民間の取引に口を出すべきでない」という竹中元大臣の意見などは個別の問題に対して「そもそも政治家は・・・」という抽象論だけから演繹法(3段論法)で結論を出そうとするもので、荒っぽすぎる強弁・詭弁の類の議論だと思う。

他方、この問題に関しては、幾つかの個別の事実「だけ」から抽象論に飛躍する立論も多い。売却の相手がオリックスという外資系企業だとか竹中元大臣が米国の・・・とよく意見交換していたなどの事実だけから、かんぽの宿の売却は米国資本に国民の財産を差し出そうとする企みの一環だというのは帰納法だとしても穴がありすぎる。こういうのは陰謀論、謀略史観と言われてしまう。

ところで、昨日(2009/2/16)に出された日本郵政の文書によると、今回のかんぽの宿の売却手続は、当初から、「一般競争入札ではなく、事業譲渡(企業買収・売却)において用いられる入札手続だった」とされている。

以下、社民党の保坂議員の2009/2/16付けブログ「保坂展人のどこどこ日記」より引用した日本郵政の文書の一部

(1)事業の譲渡における入札手続について

 日本郵政株式会社は、会計法の適用対象ではないことから、譲渡先選定に当たっては、会計法の下で官公庁等が行ういわゆる「一般競争入札」ではなく、いわゆる事業の譲渡(企業買収・売却)において用いられる入札手続を採用いたしました

 なお、入札という言葉は、事業の譲渡においても用いられますが(注)、「一般競争入札」のように「入札箱」や「入れ札」は存在せず、企画提案書が「入れ札」に相当いたします。また、事業の譲渡においては、事業に伴う不動産のみならず、有形無形の資産、あるいは雇用など総合的に加味して事業価値や買収の条件を決定しなければならないことから、一旦入札した後も、譲渡価格や譲渡に際しての諸条件について売主、買主双方が交渉を重ねたうえで、最終契約に歩み寄って行くことが一般的であります

 この意味で、応札者による入札・開札を経て落札価格が瞬時に決定される「一般競争入札」の手続きと、入札後から最終契約に至るまで、譲渡価格やその他の諸条件に変更の余地を残す事業の譲渡の手続きには、考え方、プロセスに違いはあっても、それぞれの手続きが対象とするものに適応した、公正な手続きであることをご理解いただきたいと考えます。

注:日興コーディアル証券株式会社の事業の譲渡を巡る昨今の報道においても「入札」という表現が用いられている。

今まで、「民間の取引に大臣が口を挟むのはおかしい」とか「入札で最高額だった109億円が適正価格だ」という新聞やアルファブロガーの人たちの主張は、「競争入札が行われた」ことを前提としたものだ。

今回の日本郵政の文書により、この「前提」が大きく崩れてしまった。

今まで、「競争入札が行われた」ことを前提に自らの意見を社会に対して主張した新聞やアルファブロガーの人たちは、この「事業譲渡において用いられる入札だった」という新しい前提に立ったときどう考えるのか、もう一度改めて主張する責任があると思う。

この「事業譲渡において用いられる入札だった」という新しい前提に立ったとしても、前と同じ結論だという人もいるだろうし、この新しい前提に立ったら結論は違ってくるという人もいると思う。その人たちの主張を改めて聞いてみたい。

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