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2009年3月21日 (土)

マイクロソフトによるクロスライセンス契約の裏に隠されたLinux封じ込め戦略?

マイクロソフトは数年前から他社とのクロスライセンス契約を開始して既に数百社との契約にこぎつけている(最近ではブラザー工業など)が、その裏には隠されたLinux封じ込め戦略があると指摘している、あるブログ(社内弁理士のチャレンジングクレーム)の2009/3/10付けエントリ「MicrosoftとTomTomの訴訟とGPL違反」をみた。

このエントリは、「マイクロソフトが他社と積極的にクロスライセンス契約を推し進めている狙いは相手企業(ライセンシー)にGPL違反をもたらすような契約を締結してLinuxの頒布を制限すること」だと主張している。

すなわち、上記エントリの内容の一部を引用すると、次のとおりだ。

「GPLとはGNU General Public LicenseというOSSライセンスの最も有力なものの一つである。LinuxはGPLに基づいて頒布されている。(中略)Linuxを利用している企業はGPLのライセンシーである。

(中略)Samba(Linuxと同様に著名なOSS)の開発者Jeremy Allison氏(中略)は次のように言う。『この事件はクロスライセンスですべてうまくいくケースではない。TomTom(や他の企業)が特許クロスライセンスを締結すれば(Linuxカーネルが適用している)GPL v2の7条によってLinuxカーネルを頒布する権利を完全に失う。』

(中略)GPL v2の7条には『(中略)特許侵害あるいはその他の理由(特許関係に限らない)から、あなたに(裁判所命令や契約などにより)このライセンスの条件と矛盾する制約が課された場合(中略)もしこの契約書の下であなたに課せられた責任と他の関連する責任を同時に満たすような形で頒布できないならば、結果としてあなたは『プログラム』を頒布することが全くできない。例えば特許ライセンスが、あなたから直接間接を問わずコピーを受け取った人が誰でも『プログラム』を使用料無料で再頒布することを認めていない場合、あなたがその制約とこの契約書を両方とも満たすには『プログラム』の頒布を完全に中止するしかない(中略)』http://www.opensource.jp/gpl/gpl.ja.html

(中略)この条項から「特許ライセンスにより、GPLの条件と矛盾する制約を課せられた場合、頒布が全くできなくなる」ことが分かる。 GPLの条件とは例えば「複製・頒布するにはソースコードを開示しなければならない」という条件である(3条)。

(中略)結論としては「GPLの条件と矛盾する制約を課された状態でプログラムを頒布する」ことがGPL違反となる。

(中略)次にマイクロソフトの戦略について。マイクロソフトの狙いは特許クロスライセンス中にGPLの条件と矛盾する制約を入れることで、相手方がLinuxを頒布(販売)するとGPL違反になるように仕向けることだ。(中略)特許ライセンスに含まれるある種の制約は結果的にGPL違反をもたらす。マイクロソフトの狙いはライセンシーにGPL違反をもたらすような特許ライセンスの契約を締結することで、Linuxの頒布を制限し、Windowsの独占を維持することである。」

マイクロソフトがクロスライセンス契約を推進している目的の中で、リナックスの封じ込めがその全てではないにしても、その重要な狙いの一つなのだろう。そして、そのための仕込みは、2003年以降、既に数百社との契約にこぎつけている現在、十分な段階まで進んでいる。今までに同社とクロスライセンスをした企業の中には、この裏の狙いまでは気が付かなかったケースも多いと思われる。

私見だが、このような場合、パテントトロールに対して使おうと研究されている、権利濫用の法理(自らの特許権を公益に反する効果を狙って行使することは許されないという法理)を、マイクロソフトに対して使うことはできないだろうか?

リナックスは使用料無料であることから政府機関や後進国などで広く使われており公益に資するものと考えられるから、クロスライセンス契約をリナックスを封じ込めるため使うことは公益に反する目的で特許権を濫用することになる、したがって、マイクロソフトはクロスライセンス契約の中の条項を『GPLの条件と矛盾する制約』を課すような内容として解釈することはできないか又はそのように解せざるを得ない条項はその限りで部分無効(よって、このクロスライセンス契約の締結によって相手企業がGPL違反となることはない)、ということはできないだろうか?

追記(2009/4/9):

ブライナによる特許情報局からのメールマガジンによると、次のように、マイクロソフトとTomTomとの今回の訴訟を受けての和解契約では、「マイクロソフトの3件のファイル管理システム特許の適用範囲は、オープンソース契約である GPLv2に対するTomTomの義務を満足する」、つまり、『GPLの条件と矛盾する制約』は課されていないようだ。こういうことをわざわざ発表するということは、マイクロソフトのクロスライセンス契約の中に隠されてきたリナックス封止戦略が多くの企業に知られつつあるということだろう。

「特許侵害で争っていた米マイクロソフトとオランダのGPS端末メーカーTomTomは3月30日、両社が和解し、すべての訴訟を取り下げるとともにライセンス契約を結んだと発表した。

(中略)なお、和解契約では、マイクロソフトの3件のファイル管理システム特許の適用範囲は、オープンソース契約である GPLv2に対するTomTomの義務を満足するという。また、TomTomは今後2年以内に、マイクロソフトの2件のファイル管理システム特許( FAT LFN特許)を利用した機能を製品から取り除くことを約束し、それまでは、TomTomのエンドユーザーも契約の適用範囲に含まれるとしている。」

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