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2009年3月18日 (水)

小沢秘書に政治資金規正法違反(虚偽記載の罪)は成立するのか?

2009/3/12付け日経新聞の「永田町インサイド」の中に、元検事の郷原信郎弁護士のインタビュー記事があり、それによると、小沢秘書に政治資金の虚偽記載の罪(政治資金規正法違反)が成立するためには、①西松建設が設立した政治団体が「実体のないダミー」であったこと(実体のないダミーならば、西松建設の名前を献金者として記載すべきだったのに、ダミーの政治団体の名前を記載したのは、虚偽の記載になるという理屈)、②そのことを秘書が認識していたこと(虚偽記載の故意があったこと)、の2つが必要のようだ(また、同弁護士によるこちらの記事「ガダルカナル化する特捜捜査」も参考)。

②の秘書が認識していたかどうかについては、まだ検察リークが出てないので、おそらく自白などは無いのだろう。秘書が「請求書」を西松建設に出していたという事実は、この秘書の認識があったことを推認させる間接証拠という意味で検察がリークしているのだろう。

①の政治団体が「実体のないダミー」かどうかだが、ちょうど2009/3/16付け日経新聞の「小沢氏側への献金の2団体 西松、偽装し実体隠す」という記事の中に、かなりの事実関係が出ていたので、少し検討してみたい。

1.この記事では、「2つの政治団体は、2004~2006年の3年間に計14回のパーティを開催し、各パーティは、宴会施設などを借りて行われ、それぞれ西松の幹部ら10人程度が出席していた(だけだから、実体のないダミーだ)」と書かれていた。

しかし、この記事の事実がもし本当なら、3年間に計14回のパーティ、1年に4~5回のパーティを宴会施設を借りて開いて、しかも毎回10人程度が出席していたのだから、「活動の実体」はかなりあったと見るのがむしろ自然ではないだろうか。

2.この記事では、「西松建設は、社員に政治団体の会員になるように『勧誘』し、年数万円~十数万円の会費はボーナスなどで補填していた(だから、実体のないダミーだ)」とも書かれていた。

しかし、この記事のように本当に「勧誘」していたのなら、拒否もできる訳だから、むしろ、この勧誘に応じて社員が会員になったのなら「一応の自発的意思に基づいて会員になった(会社の『しがらみ』からだったとしても、そういうことは、学校のPTAの役員でも『しがらみ』からだし、実際上はよくあることだ)」ので、「団体としての実体はある」と見るのが自然ではないか。また、会費をボーナスで補填していたとしても、それは、例えば宅建主任の資格を持つ社員に資格の登録の会費の補填などを含む意味で「資格手当て」を出すことなどはよくあるから、企業にとって全体としてプラスになると思えば企業がボーナスなどで補填することは合理的ともいえるので、それと似たような意味のものと捉えるならば、よくあることだ。

3.この記事では、「1998年に未来研という政治団体が設立されたとき、西松の総務部が同社の元幹部に代表者の就任を『依頼』して元幹部が代表者になったが、その代表者は未来研の実務には関与せず、献金やパーティ券購入の管理はすべて総務部が行っており、事実上の名義借りだった(だから実体のないダミーだ)」と書かれていた。

しかし、代表者はパーティに出席してスピーチなどはしていたはずだ。パーティ券購入などの実務については、代表者がいちいち関与しないで事務局が担当するのは、むしろ普通だろう。また、福祉やスポーツなどの団体について、その事務局を役所や企業の総務部がやることも普通にあることだ。例えば政府の審議会でも、その事務局は各省庁の総務部などが担当し、審議会の委員は年に数回の会議に出席して議論やスピーチするだけだが、それだからといって審議会が「実体のないもの」とは言えないだろう。むしろ、この記事の事実では、代表者は総務部の「依頼」に応じて(「依頼」なら断ることも可能)、ちゃんと自らの自発的意思に基づいて代表者に就任していたということなので、むしろ団体の実体があったことを示すものでもあると思う。

4.この記事ではないが、少し前に、秘書が「西松建設あて」に「請求書」を出していたという事実がマスコミで報道されていた。

しかし、この「請求書」は、おそらく、支払いがなければ裁判所に訴えて支払いを強制するというものではないだろう。よく、福祉団体や出身大学などから「具体的金額を示しての寄付や献金のお願いの手紙」が届くことがあるが、それと同じような「献金のお願いの手紙」の意味のものならば、特に異常なものではないと思う。

また、「西松建設あて」の請求書とあるが、請求書(献金のお願いの手紙)の「宛名(請求の名宛人)」が西松建設なのか、それとも、郵送した先の「住所」が団体の事務局のある西松建設建設総務部の住所だったのかは、記事には書かれていなかった。多分、「住所」が事務局のある西松建設内となっていたという可能性が高いと思う。そうであれば、政治団体宛ての請求書(献金のお願いの手紙)を、団体の事務局の「住所」である西松建設内に送っただけなので、特におかしいことはない。

以上のように、秘書について政治資金規正法違反(虚偽記載の罪)が成立するかどうかについては、①西松建設が設立した政治団体が「実体のないダミー」であったこと、②そのことを秘書が認識していたことが必要だが、②はもちろん、①についても、かなり微妙と思う。

追記(2009/3/20)

水口洋介弁護士のブログ(2009/3/9記事)では、政治資金規正法第25条1項3号「政治資金規正法25条1項(次の各号の一に該当する者は、5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。) 3号 第12条第1項若しくは第17条第1項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者(第12条第1項には、政治団体の会計責任者の報告書提出義務が記載されている。)」について、次のような書かれている。

「政治資金規正法は複雑でわかりにくいですが、これはいわゆる形式犯ですから、虚偽であるか否かは形式的な事実認識が問われるはずです。つまり「新政治問題研究会」などという政治団体が存在しないことを知りながら、あえて存在すると記載することが虚偽記載になるのであって、もし「新政治問題研究会」が実在するのであれば、そう書いたからといって虚偽記載ではないということになるのが普通の形式犯の虚偽という故意についての解釈でしょう。」

つまり、資金が西松A→政治団体B→団体C(小沢事務所の団体)と流れていたとき、しかも、少なくとも団体Bが全くのペーパーではないと認識していたとき、Cの秘書は、献金者の名前としては素直に(形式的な事実に基づいて)団体Bの名前を書けばよいのであって、西松Aの名前を書くとかえってその方が「虚偽記載」になるのではないか、ということだ。

このような従来からの形式犯の故意の解釈からは、今回の秘書について上記②の故意が認められるかは極めて微妙だろう。また、上記①の団体が事実として「実体のないダミー」かどうかも大きな争点となると思う。

追記(2009/3/22):

政治資金規正法はわかり難い法律だが、これを簡単に解説している文章を「佐々木和子弁護士事務所」(元検事で元参議院議員の佐々木弁護士によるもの)から見つけた。次のとおり。

「政治資金規正法違反は,贈収賄と違って形式犯であり,その違反による強制捜査(逮捕)は従来1億円が基準であった。しかし,3日の逮捕は,わずかにその額2,100万円(+100万円)。
 西松建設は,政党(及び政治資金団体)にしか寄附ができないとする制限(21条1項)に違反し,ダミーの政治団体を使って寄附をし,一社当たりに認められる年間寄附上限額(資本金50億円以上の会社であれば年3000万円)を超えた(21条の3)。
 小沢側はその事情を知りながら,寄附を受けた(22条の2)。これは「1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」(26条)という軽罪だから,法的構成としては,正しい事項を報告しなかった12条違反として,25条の「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金」としているのであろう。ちなみに前者の時効は3年,後者は5年である。」

この文章によると、今回の秘書の容疑としては、

(a)西松が一社当たりに認められる年間寄附上限額(資本金50億円以上の会社であれば年3000万円)を超えている(21条の3)ことを知りながら,寄附を受けた(22条の2)という「1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」(26条)という軽罪、

(b)正しい事項を報告しなかった12条違反としての,25条の「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金」の形式犯、

の2つがあるということらしい。通常、マスコミなどで議論されているのは(b)の方だろう。

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