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2009年3月 2日 (月)

かんぽの宿での論点のずれ方

最近、郵政民営化の議論が盛んになっているように感じる(例えばここ「Chikirinの日記」)。

読んでると郵政民営化の問題を中心に論じているように見えるが、なぜ今、あえて、この問題を論じているのか。それは、おそらく、今「かんぽの宿」がすごく問題になっており、それが郵政民営化の見直しに繋がる可能性があるから、それはまずい、ということからだろう。

つまり、郵政民営化という大きな問題を論じているように見えながら、実は「かんぽの宿」の問題を論じている。というか、郵政民営化という大きな問題を論じて見せることにより、「かんぽの宿」の問題を極小化しようとしているように、僕には見える(見方は立場によって違うだろう)。

つまり、郵政民営化そのものが問題なのか、「かんぽの宿」が問題なのか、「かんぽの宿」を問題にすることが郵政民営化の見直しに繋がってしまうことが問題なのか(竹中さんなどは「かんぽの宿」の問題の背後には郵政民営化を阻止したい既存勢力による陰謀があるとも主張している)。

マスメディアやネットを見ていると、次の(A)と(B)の2つの立場に分かれている。

(A)「かんぽの宿での不正・不透明性」は極めて重要な問題だとする人たち。

(B)「かんぽの宿で不正がもしあれば調べればよいとしても、それは重要な問題ではなく、それよりも、この問題で郵政民営化が足踏みする方が極めて問題だ、今の経済状況はそれどころではない」という人たち。

(A)の人たちと(B)の人たちとでは、「何が重要か」について議論が全くかみ合っていない。特に(B)の人たちは、「かんぽの宿での不正・不透明性」に関する事実や証拠の問題に余り触れたがらない(それよりも、それをスルーして郵政民営化という大きな問題に話を持って行こうとする)傾向があるように思える。

(A)の人たちは、おそらく、経済的利益よりも正義・法治主義が大事だと考える人たちで、郵政民営化も大事かもしれないけど、「もし、かんぽの宿で不正や不透明性があったのなら徹底的に究明すべき」という論調だ。司法関係、政治家、主婦、中流・低所得層の人たちに、こういう価値観の人が多いのではないだろうか(例えばここ「日録(不定期)」)。

他方、(B)の人たちは、おそらく、経済的な損得に興味が深い人たちで、「かんぽの宿で不正や透明な取引があったかどうか」は皮相なことに過ぎない、もっと郵政民営化全体を早くやって今の経済状況を一刻も早く何とかしてくれ、という論調だ。僕の私見だが、金融関係や富裕層の人たちに、こういう価値観の人が多いような気がする。「新自由主義」(例えば池田信夫さん)の人たちもそうだろう。

僕は、「社会全体が経済的に得になる」のであれば少々の不正や不透明なことは眼をつぶっていいとは思わない。子供たちのためにも、日本がそういう倫理観を無くした社会になって欲しくない。経済的に恵まれなくても、正しいことを認める社会であって欲しいと思う。個人的な問題でも、経済的に損しても筋を通したいというタイプで、例えば会社の上司にゴマスリをして出世しようとは思わない性格だし、そういう価値観だ。

(B)の人たちは、日本が経済的に発展し裕福でいられさえすれば、少々の汚職があってもいい、倫理観の廃れた汚い社会でもいい、政治的自由も制限されてもいい、軍事政権でもいい、などと考えるのだろうか。まあ、どんな社会でも、「うまい汁」を吸える立場に食い込めればいいという人もいるだろう。

しかし、仮にそういう「うまい汁」を吸える立場に自分が入ったとしても、そういう社会では楽しくない(自分だけが「うまい汁」を吸っても楽しくない)と感じるのが(A)の立場の人たちだと思う。

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雑談(政治関係)」カテゴリの記事

コメント

どの類型か分かりませんが、私の立場です。
1.郵政民営化全体について
・郵政民営化はきちんと進めるべき
・民営化を進める上で、過去実績から見て宿泊事業が民営化後の強みになるとは思えないので、これは極力早期に売却する必要がある

2.今回のかんぽの宿事業譲渡問題について
・株主が国である以上、取引が不公正なものであれば、国民より糾弾されて然るべき
・但し、これまでの報道等の中から不公正な取引であることを示す具体的な材料は殆ど無いように見える
・関係者の風評被害のリスクを考えた場合、少なくとも総務大臣はまず内々にもっと具体的な調査を行い、確たる材料をもってから公表すべきであった(少なくとも「勘」に基づいて風呂敷を広げるべきではなかった)

投稿: ChiriChiri | 2009年3月 3日 (火) 00時24分

ChiriChiriさん、コメントありがとうございます。以下に、僕の意見を記しておきますね。

「・但し、これまでの報道等の中から不公正な取引であることを示す具体的な材料は殆ど無いように見える」についての僕の意見。
・・・かなり怪しい情報は沢山でているように思います。つまり、刑事裁判でいう「直接証拠」(例えば凶器の指紋やDNA)はまだ出ていませんが、「状況証拠」(例えば、事件の後に急に金遣いが荒くなったとか、事件の後に急に引っ越したなど)はかなり出ているように思います。

「・関係者の風評被害のリスクを考えた場合、少なくとも総務大臣はまず内々にもっと具体的な調査を行い、確たる材料をもってから公表すべきであった(少なくとも「勘」に基づいて風呂敷を広げるべきではなかった)」についての僕の意見。
・・・この意見は、竹中さんの部下だったという慶應義塾大学の岸教授も述べてますよね。
風評被害をどの程度防ぐべきかについては、刑法の名誉毀損罪が参考になると思います。名誉毀損罪では、政治家や公務員などについては(通常の個人と異なって)ある程度の資料に基づいて報道などすることは公益性があるので違法ではないとしています。
個人や中小企業については、風評被害は十分に考慮すべきと思います。これに対して、政治家、公務員、大企業などのような、権力を持ち公益的性格を有している個人や団体については、むしろ世論に訴えてその問題点を世論に認識してもらい、国会での調査や検察の捜査に繋げていく方が望ましいと思います。オリックスは私企業とは言え、大企業であり、ある程度の公益的性格は持っていると思います。 

投稿: 寝たろう | 2009年3月 3日 (火) 10時49分

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 私はサンデープロジェクトなる番組はほとんど全く評価していない。正確を期するなら、少し前に「佐藤優テレビ初登場」という時には見たことがあるが、しかし別にわざわざ見るほどのものではなかった。 (佐藤優についてここでごちゃごちゃ言うつもりはないが、一言だけ言... [続きを読む]

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