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2009年3月27日 (金)

パテントトロールと恫喝訴訟と民主主義

現在、特許庁などで、パテントトロールによる恫喝訴訟を防ぐためなどの目的で特許法改正が議論されているが、恫喝訴訟は、日本ではむしろ、訴訟費用を惜しみなく出せる「大組織」「大企業」によって行われることが多い、ということは認識されるべきだろう。

2009年3月26日、週刊現代の「大相撲の八百長」報道に対する名誉毀損による損害賠償請求訴訟で、日本相撲協会および力士側勝訴の判決が言い渡された。この相撲協会という「公益法人」が訴訟で求めた請求額は、6億1,600万円というどうみても恫喝目的としか思えない金額だが、判決の4,290万円の賠償金というのも、今までにない高額だ。もちろん、大組織であればあるだけ経済的損害が大きくなるだろうから、6億円という損害の「計算」は可能だろうが(つまり、「恫喝目的ではない」という「理由付け」は可能だろうが)、「公益法人」であることも考えれば、むしろ「内部の浄化に役立つので報道してくれてありがとう、報道は公益にかなうもの」という見方もありえる。

以下に毎日jpの記事より一部を引用。

「相撲八百長報道:講談社に4290万円賠償命令 東京地裁

 横綱朝青龍ら力士30人と日本相撲協会が、八百長疑惑を報じた「週刊現代」の記事で名誉を傷付けられたとして、発行元の講談社や執筆者のフリーライター、武田頼政氏らに計約6億1600万円の賠償などを求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。中村也寸志裁判長は「記事が真実との証拠はない」と述べ、総額4290万円の支払いと記事を取り消す広告の掲載を命じた。名誉棄損訴訟の賠償額としては過去最高とみられる。」

この判決の4,290万円は置いておいても、原告の相撲協会が請求した「6億円」という金額は、週刊現代という決して大きな資産を持っているとは思えない出版社に対しては、報道に対する萎縮効果・恫喝効果は十分過ぎるだろう。週刊現代は、今後、有力なタレコミがあっても、もう2度と大相撲の八百長の記事を書こうとは思わないだろう(相撲協会の思惑どおり)。

こういうことをやっていると、出版社は「萎縮」して、活発な報道ができなくなり、ひいては報道による国民の知る権利の実現も難しくなり、民主主義への脅威となる可能性があると思う(国民の知る権利が確保されないで十分な情報を知らされないまま民主主義が行われると容易に衆愚政治に堕してしまうことから、国民の知る権利は「民主主義の基礎」と言われている)。

以前も、「オリコン訴訟」といって、オリコンチャートの信憑性に関して疑問を呈するコメントを月刊誌「サイゾー」で述べた個人のジャーナリスト(烏賀陽弘道 氏)に対して、オリコンが5千万円という高額の損害賠償を請求して、「恫喝訴訟」として問題となった(参考「ウィキペディア」)。こういうことが許されるなら、資産を持たない個人ジャーナリストや小出版社は、自己破産を恐れて、雑誌等での不正の告発などができなくなってしまう。

パテントトロールの「恫喝訴訟」を阻止しようという手段としては、おそらく民法の「権利濫用」の法理が想定されているのだろうと思うが、特許庁なども、狭い知財の世界のみを見ているだけでなく、もっとより広い世界まで議論の裾野を広げて、民主主義やジャーナリズムにとって極めて大切な上記のような個人ジャーナリストや小出版社への「恫喝訴訟」の問題をも含めて、例えば法務省や日弁連などと連携するなどして、より広い視点で「恫喝訴訟」に対する「権利濫用法理」の有効性などについて議論をしていって欲しい(ってまあ、職務の分掌があるので難しいんだろうけど)。

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コメント

あのな、新聞記者でさえ「羽織ゴロ」って言われてたんだ、今だって体質は変わってない。ましてあの五流フリーライターがヨタ話を書き散らして、名誉を毀損されたんだから、訴えるのが当然だろう。それを「恫喝」とは、片腹痛いことを抜かすなよ。ブログの記事を書くんならいっぺん頭の中を通してから書け。
賠償額が安過ぎるんだよ。2審で全額認められて、武田が腎臓売ってでも払わなきゃならないようにしなきゃダメ。言いたい放題と言論の自由を一緒にしてる、このブログの管理人にはわからんだろうがね。
週刊ヒュンダイはもう死に体。部数がガタ落ちだけど、これで止めだな。紙の無駄が減って良いことだよ。

投稿: | 2009年3月29日 (日) 00時24分

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