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2009年3月 9日 (月)

特許訴訟の提訴件数の日米比較

日経エレクトロニクス(2009/3/9号)の「特許で揺らぐ無線LAN」の記事中の48頁に米国での特許訴訟件数が掲載されていたので、メモしておきたい。

2007年9月期(2006/10/1~2007/9/30)の全米の地区裁判所が受任した知財関係訴訟全体の件数の合計は、1万783件。

2007年9月期(2006/10/1~2007/9/30)の全米の地区裁判所が受任した特許訴訟の件数の合計は、2,896件。

この特許訴訟のみの2,896件は、上記の特許を含む知財関係訴訟全体の件数である1万783件の中の約26.9%(ちなみに、著作権関係の訴訟は同約40.8%、商標関係の訴訟は同約32.3%)。

なお、この日経エレクトロニクスの記事によると、上記の全米の特許訴訟2,896件の中の12.4%の359件がテキサス州東部地裁に提起されているらしい(知財だけでなく全ての民事訴訟についてみると、全米の提起件数の25万7507件の中では、テキサス州東部地裁は全米の1%を占めるに過ぎないにも拘わらず! ちなみに、カリフォルニア州北部地区裁判所には、全米の地区裁判所が受けた特許訴訟2,896件の中の159件が提起されている)。

このようにテキサス州東部地裁に特許訴訟が集中している理由は、①特許権者が判決で勝つ確率が8割程度と非常に高いこと、②裁判所が特許訴訟に慣れているため審理期間が短いことなどから、特許権者の多くがこの地区での裁判を選ぶためだ(このような訴訟戦術は「フォーラム・ショッピング」と呼ばれている)。テキサス州東部地区において、特許訴訟のためにやってくる特許弁護士(金持ちが多い)や企業担当者への宿泊や飲食などのサービス産業など、特許訴訟がその経済活動に貢献している部分はかなり大きいらしい。

この特許訴訟件数2,896件は、特許侵害訴訟だけでなく審決取消訴訟も含まれているのかどうかは、この記事の中では、はっきりしない(米国でも、拒絶審決などに対する審決取消訴訟はある)。ただ、米国では、拒絶審決に対する取消訴訟は、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)への直接提訴が行われているらしい(ワシントンDCのコロンビア地区連邦地方裁判所への出訴も可能のようだがこちらは少ないらしい)。したがって、上記の2006/10/1~2007/9/30の期間に全米の地区裁判所が受けた特許訴訟件数の2,896件は、仮にその一部に審決取消訴訟も含んでいるとしても、そのほとんどが特許侵害訴訟と考えられる。

一方、日本では、このブログの2009/1/13の特許訴訟の提訴件数が減っている件(日経の記事より)でも述べたとおり、2007年の地裁レベルの特許侵害訴訟の提訴件数は156件となっている。これは「特許侵害訴訟」のみ。これとは別の特許関係の「審決取消訴訟」が日本で何件あるかだが、(詳しい件数は今調べている時間がないので)仮に300件とすると、日本での特許訴訟(侵害訴訟と審決取消訴訟との双方)の合計の件数は年間450件程度となるだろうか。

(※特許庁によると、実用新案・商標・意匠を含む全て?の審決取消訴訟は2007年で約430件とのことなので、特許のみの審決取消訴訟は多くても年300件かそれよりかなり低い件数と思われる。)

上記のとおり、米国の特許訴訟の件数は2,896件だから、日本の特許訴訟の件数(上記のように約450件程度と仮定する)は米国の約15%程度ということになる。この約15%というのは、米国の上記の2,896件が審決取消訴訟を含んでいると仮定したときの数字だ。もし含んでないと仮定すれば、米国の特許訴訟(特許侵害訴訟のみと仮定)の件数は2,896件に対して、日本の特許侵害訴訟の件数は156件だから、米国の約5%程度ということになる。

上記のように15%か5%かのいずれにせよ、特許出願件数は日米で大きな差はない(特許出願件数の正確な数字は今はみてないが、最近は米国の方が少し多いが、数年前までは日本の方が多かった)ことから考えて、日本の特許訴訟が「米国に比較して余りに少なすぎる」ということは明らかだ。

他方、米国が「異常に多すぎる」のだという見方もあり得る。米国では、特許弁護士の数が多い、訴訟1件当たりの特許弁護士の費用が数億円以上と高額になっており特許訴訟が一大産業化している、着手金ゼロで引き受ける成功報酬弁護士が存在するので訴訟提起のハードルが低い、パテントトロールが多い、3倍賠償など特許訴訟のインセンティブが働きやすい、ゴールドラッシュの歴史などに見られるように一獲千金のアメリカン・ドリームを夢見る人たち(そういう冒険家的な気質の人たち)が多い、などの特殊要因があるから。

日米の特許弁護士数の比較、日米の特許出願件数・特許登録件数の比較などもやってみたいが、今は時間がない。まあ、分析としては少し尻切れですが、この辺で。

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コメント

自分の理解では米国で審決取消訴訟に当たるものはCAFCに係属します。
よって審決取消訴訟の件数はテキサス州東部地区連邦地裁の訴訟件数には含まれないと思います。
審決取消訴訟に当たる判決は最近で言えばIn re Bilskiです。

投稿: zucci | 2009年3月 9日 (月) 20時31分

zucciさん
コメントありがとうございました。
私は米国のことは詳しくないので、調べてみましたが、米国では、拒絶審決に対する取消訴訟は、①連邦巡回控訴裁判所(CAFC)への直接提訴がほとんどで、②ワシントンDCのコロンビア地区連邦地方裁判所への出訴は可能だが少ない、というのようです(これも間違っているかも。何かありましたら、またお願いします)。
したがって、全米での地区裁判所が受けた2007年9月期件数の2,896件は、そのほとんどが特許侵害訴訟(一部に審決取消訴訟も含む)と考えられます。
本文も訂正しておきます。

投稿: 寝たろう | 2009年3月 9日 (月) 21時45分

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