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2009年4月20日 (月)

パテントトロール対策についての特許庁の特許制度研究会の議論

パテントトロール対策としての「特許権の差止請求権の権利濫用法理による制限」について、特許庁が設営している特許制度研究会の第2回会合の議事録が特許庁ホームページに掲載されていた。

この議事録を見る限りでは、会合のメンバーは、企業、判事、学者、弁護士、弁理士がバランス良く配置されていると思うし、議論の内容も、特に大企業寄りということもなく、かなりバランス良くなされていると感じた。特に、企業との利害関係の無い判事が参加していることがバランスに寄与していると感じる。

この議事録の中で良いなと思った議論を引用すると次のとおり。

・日米の制度の違いは、日本は原則差止めも損害賠償も認められるのに対し、米国は権利侵害に対する救済は懲罰賠償も含み得る損害賠償が原則で、差止めは裁判官の裁量による例外的措置である点。・eBay判決は米国における一般原則を特許権侵害に当てはめたものにすぎない。日米の制度及び実務の違い、差止めを制限した場合の悪影響を考えて慎重に判断すべき。
・特許権侵害の回避努力にもかかわらず、意図せずに他社の持つ特許権を侵害してしまった場合に、その後ライセンス交渉に誠実に対応しているにもかかわらず事業を差し止められるとしたら不当ではないか。
・差止請求権の行使に対応し、製品における寄与度が低い特許を回避するのは一定期間があれば容易ではないか。
・特許の技術的回避にはそれなりの時間がかかる。差止め実施までの猶予期間を適切に設定できるのであればかなりの問題が解決できるのではないか。
・有償譲渡された特許権による差止めは、目的が実施料収入や損害賠償である場合が多いと思われ、裁判で和解を勧奨されれば解決するのではないか。
・小さな企業が市場拡大・独占を目指す場合には、差止請求権が非常に大事。一方、大企業が小さな企業の特許を無視して大規模な事業活動を行った場合に、eBay判決の4要素を考慮したとして、差止請求が認められ得るのか疑問がある。 ・日本は、各国と比較して進歩性の審査基準が厳しいため、価値のない特許権による弊害は抑制されている。また、裁判において無効の抗弁が認容される場合も多く、製品に対する寄与度を勘案して損害賠償額を算出しているため、米国に比べて高額賠償が出にくいなど、特許権が強力であることの弊害は生じにくい。
・特許権の性質について、従来は所有権類似のものと捉えて差止めを認めてきたが、知的財産が土地や建物などの境界線が明確な物を対象とする所有権とは本質的に異なるとすれば、必ずしも特許権を所有権と同様に考える必要はない。例えば、特許権の行使が権利濫用であるか否かを判断する際に考慮すべき要素を、特許制度特有のものとして規定してもよいと思う。
・日本において、理論的には一定の場合に権利の濫用であるとの理由(いわゆる「権利濫用法理」)により差止請求権を制限する余地はあるが、実務的には制限した場合の代替措置などバランスを取る方策を検討すべき
特許権の効力として将来分の金銭的填補と差止請求はセットで考えるべき。特許権が財産権である以上、代替措置やその後に発生する損失を経済的に填補するような制度を整備しなければ、国民の財産権を保障する憲法の規定に違反することにもなり得る
・裁判実務では、他の法域と同様に、一般原則である権利濫用法理により差止請求権を制限するのは困難ではないか。差止請求が相当でない場合には、特許権を無効または権利範囲を狭いと判断し、問題を回避していると言われている。しかし、これでは侵害自体が否定され、損害賠償まで否定することとなり、行き過ぎたこととなる。権利侵害を認めた場合に権利濫用と判断した事例はないのではないか。したがって、現行制度では損害賠償だけ認めて差止請求を認めないという運用を行うのはかなり難しく、これでは硬直的であり立法措置が必要。例えば、損害賠償請求を原則として例外的な場合に差止請求を認める制度があり得るが、特許権の保護のベースが下がることが懸念される。
・差止めを制限したとしても、特許権侵害として損害賠償を認めている場合には、理論上は侵害行為に刑事罰が適用され得るが、それでは行き過ぎであるため、刑事罰を適用されることのないよう、侵害の違法性を打ち消す目的で、裁定と同様の効果を差止制限に伴わせるような制度設計はできないか。

・事務局より、差止めを認めるかを判断する際の考慮事項として、次の4つの要素を示した。  1)侵害を放置した場合、権利者に回復不能の損害を与えるか  2)損害に対する補償が、金銭賠償のみでは不適切か  3)両当事者の辛苦を勘案して差止めによる救済が適切か  4)差止命令を発行することが公益を害するか  (以上の引用で、太字は当ブログによる)

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