« 知財高裁への審決取消訴訟の件数などの統計(2007年) | トップページ | 郷原信郎・元検事の「小沢代表が今、行うべきこと」を読んで »

2009年4月14日 (火)

北野誠「タレント廃業危機」と「マスコミの劣化」

人気タレントの北野誠が、出演しているすべてのテレビとラジオの番組を降板することになったらしい(ソース)。

しかし、どのような「不適切発言」が原因なのかは報道されていない。ラジオで某宗教団体(S学会)とその教祖を批判したためとか、某芸能事務所社長の個人性癖をばらしたためとかネット上で言われているが、双方が、相手のことが原因だとネットに盛んに書き込みしているような感じだ(参考)。S学会は、多くのラジオ番組のCMスポンサーにもなっているらしい。

僕はこの記事を見て、数年前のオリコン訴訟を思い出した。オリコンが自社のランキングの信頼性を批判した個人ジャーナリストに5千万円という大金の損害賠償請求訴訟をして「恫喝訴訟」として話題になった。

大組織などの圧力によって個人が仕事を奪われたり生活を脅かされたりして恫喝されると、個人はやはり自分や家族の生活を考えて、黙ってしまうしかない。

また、最近の「かんぽの宿」の問題をサンプロなどの報道番組がスルーしてたこととも似ている。あれも、オリックス不動産などがサンプロのスポンサーになっていたことと関係があると思う。

つまり、マスコミが、スポンサーからの圧力に簡単に屈して、それまでの出演者を急に番組から降板させたり、番組の内容をスポンサーの望むように変えたりするのは、「マスコミの劣化」として共通する問題であり、それは「マスコミの偏向」にも繋がっている。

こういう「マスコミの劣化」や「マスコミの偏向」は、小泉政権の頃、ライブドア事件の前頃から、目立ってきたと思う。

何故そうなったのか、自分なりの仮説だけど、マスコミに「余裕」がなくなってきたからではないだろうか。特に経済的余裕がなくなってきたから、簡単に外部の圧力に屈してしまう。

つまり、ネットの台頭によりマスコミが「相対化」されて、広告料なども値下げ圧力に晒されたり、広告の依頼も少なくなると、マスコミの人たちも、年収が減少する可能性など、自分の生活が心配になってくる。そうすると、「社会の木鐸」というような使命感よりも、当面の収入、当座のスポンサーのご機嫌取りに目が行くようになる。

同じことは、弁護士の業界などでもあるようで、最近の弁護士は「余裕」がなくなっているようだ。弁護士も、数年前までは、仕事は弁護士側が選ぶような状況で、顧客側が「先生、この仕事、何とか引き受けてください、お願いします。」と頼みこむような感じだった。それが、最近は、弁護士数の増加、周辺の司法書士や行政書士の台頭により、かなり焦ってきたように見える。従来は弁護士は広告を打つことは「みっともない」としてきたが、司法書士や行政書士がサラ金や自己破産などの広告を大量に出して仕事の受任を増やしているのを見て、このままでは仕事を奪われるだけだとして、最近は弁護士も広告を出そうという感じになっているらしい(参考)。

弁護士は顧客のことを「お客様」とは言わないで「クライアント(依頼人)」と呼ぶ。これは、顧客と弁護士とは対等の関係であること、弁護士は顧客の言うことをただ聞くだけでなく逆に教える立場にもなるし、弁護士の方針を聞かない顧客なら弁護士から切ることもあるということ、つまり、「弁護士にとって顧客は決して神様ではない」ということを示すものだ(医者や経営コンサルタントでも同じ)。それが、最近は、弁護士側の立場が弱くなって、「クライアント」から「お客様=神様」に徐々に変わりつつあるように思う。

テレビの広告業界などでも、広告主を「お客様」でなく「クライアント」と呼んできたのでは、と思う(推測)。それが、だんだんと、テレビ局などマスコミ側の立場が弱くなってきて、「お客様=神様」に変わってきている。

だから、「お客様は神様で、お客様の言われることは絶対です。」ということになって、スポンサーの圧力に素直に従うようになってきたのではないだろうか。また、明示的な圧力はない場合でも、テレビ局側の方で勝手にスポンサーの意向を忖度して、萎縮して自主規制してしまうことも多いと思う。

それが、「マスコミの劣化」「マスコミ偏向」の歴史的な原因の一つだと思う。

つまり、根っこは、小泉政権時代の市場万能主義にあると思う。市場万能主義が蔓延することにより、使命感や社会正義などを含むあらゆるものが「金銭で相対化」された(まぁ、資本主義とはそういうものだとホリエモンが言っていた)、その結果、マスコミの使命感なども相対化されて、マスコミに儲けを与えてくれる大組織のスポンサーの力が、相対的に強くなったのだと思う。だから、マスコミが容易に圧力に屈するようになった(第二次大戦の直後の頃、「闇米は不法だから」と言って食べないで餓死した裁判官が居たのだが、そういう使命感は、最近の「相対化」の風潮の下では、あまり尊重されることはない。)

ただ、それだけではないようにも思う。市場万能主義の本家は米国だが、米国ではどうなっているのだろうか。そこまでマスコミが劣化しているという話は聞いたことが無い。何かかが日本とは違うのだろう。米国では、一足先に、ネットの攻勢でマスコミが「経営危機」に晒されているらしいが、「劣化」や「偏向」とは違う。まぁ、米国では新聞は地方紙などがほとんどで全国紙などが少ないということなどで日本とは事情が違うのかもしれない。テレビもケーブルテレビが多いらしいし。

|

« 知財高裁への審決取消訴訟の件数などの統計(2007年) | トップページ | 郷原信郎・元検事の「小沢代表が今、行うべきこと」を読んで »

雑談(政治関係)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/510700/44669705

この記事へのトラックバック一覧です: 北野誠「タレント廃業危機」と「マスコミの劣化」:

« 知財高裁への審決取消訴訟の件数などの統計(2007年) | トップページ | 郷原信郎・元検事の「小沢代表が今、行うべきこと」を読んで »