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2009年4月 7日 (火)

「かんぽの宿」のアドバイザリー契約当初の売却想定価格は640億円

以下は2009/4/7付けの「植草一秀の『知られざる真実』」からの一部引用

「・・・(前略)・・・また、アドバイザ-から2度(平成20年8月、平成20年11月)にわたって「売却中止」を含めた選択肢の提示を受けていたにもかかわらず、社内で十分な検討もぜず強行したことが明らかになりました。また、かんぽの宿は赤字経営だと言われていましたが、メルリリンチが作った入札参加者へ提供した資料によると、平成21年は27億円の赤字ですが、来年22年からは10億円、13億円、16億円、17億円、17億円と毎年黒字経営ができることなっています。

7日(火)には参議院総務委員会でかんぽの宿の集中審議があります。午前中参考人聴取、午後質問です。参考人に竹中平蔵氏を指名しましたが、やっぱり出てきませんでした。私も質問ではトップバッターで厳しく追及することとしています。衆議院総務委員会も7日の午前中この問題について集中審議をするようです。」

(ここまで引用。太字は本ブログによるもの。)

「かんぽの宿」不正売却問題の全容が明らかになってきた。日本郵政が「かんぽの宿」を不正に低い価格で「オリックス不動産」に売却しようとしていたことがほぼ確実になったと見て良いだろう。

2008年1月のアドバイザー会社契約時の稟議(りんぎ)書では、売却想定価格が640億円で計算されていた。この金額であれば、資産価値の実態と比較しても、それほどの違和感は生じない。「かんぽの宿」疑惑を否定する論者は、懸命に109億円の正当性を主張してきたが、109億円が不当に低い価格であることは、このことによって明確に証明されたと言える。

また、アドバイザーからは二度にわたって売却中止の選択肢が提示されたが、日本郵政が安値売却を強行したことも明らかになった。

さらに、竹中平蔵氏などが「安値売却の最大の根拠」としてきた、「かんぽの宿」収支が2010年から黒字になると見込まれていたことまで明らかにされてしまった。(以下略)」(赤字は本ブログによる)

上記のように、「2008年1月の(日本郵政とメリルリンチ日本証券との)アドバイザー契約時の稟議(りんぎ)書では、売却想定価格が640億円で計算されていた」らしい。

このアドバイザリー契約では、成功報酬として、①売却額の1.4%、②最低保障として6億円となっていた。そのため、オリックス不動産への売却決定額が109億円というのは妥当だ(当初の売却予想額もこのくらいの金額だった)という日本郵政の主張を前提として、アドバイザリー契約の当初の売却予想額が109億円程度だったとすると、このアドバイザリー契約の成功報酬の考え方はあまりに不合理で不自然だということを、多くの人が主張していた。2009/2/12付け当ブログでも、次ように述べていた。

「日本郵政とアドバイザーのメリルリンチ日本証券との業務委託契約では、毎月1千万円(年1億2千万円)の手数料と別に、「売却価格の1.4%か、この額が6億円を下回る場合は最低6億円」を成功報酬として支払うという取り決めがあったらしい。

この成功報酬の取り決めを分析すると、「売却価格の1.4%」が原則で、「この額が6億円を下回る場合は最低6億円」の部分は例外ということになると思う(なぜなら、もともと成功報酬というのはそういうもので、出来高制が原則で、成功報酬の最低保証というのは、「最低これくらいもらわないとペイしないのでやってられない」という最低限の額のはずだから)。

そして、「売却価格の1.4%」が「最低保証の6億円」を超えるためには、今回のかんぽの宿の売却価格は、429億円以上でなくてはならなかった(売却価格が429億円に達して初めて、その1.4%の6億円が成功報酬となるから。429億円×1.4%=6億円)。

とすれば、この成功報酬の取り決めをしたときは、日本郵政とメリルリンチ日本証券との間で、「今回の売却価格は429億円を超える現実的可能性が高い」という共通認識があったはずだ。

なぜなら、もし、「今回の売却価格はどうせ429億円以下だろう」ということなら、メリルリンチ日本証券としては、売却価格が429億円だろうが300億だろうが100億だろうが10億だろうが、同じ最低6億円の成功報酬を受け取れるので、全くやる気・モチベーションが湧かないことになるが、そのような全くやる気・モチベーションを出させないような成功報酬の取り決めは、全く不合理で意味がないからだ。」

しかし、上記の植草一秀氏のブログからの引用のように、アドバイザリー契約当初の売却予想額が640億円だとすると、①売却価格の1.4%(640億円の1.4%は約9億円弱)、②最低保障として6億円(=アドバイザリー契約の当初は、売却価格は429億円(※429億円×1.4%=6億円)を超える、つまり、640億円くらいと予想したのだろうと読み取れる)は、合理的であり、不自然ではない。

ということは、要するに、オリックス不動産への売却が決まった後の日本郵政の総務大臣や国会への説明がおかしかったということだ。日本郵政は、国会などに、最初から、「アドバイザリー契約当初の売却予想額は640億円でしたが、最終の売却額は109億円になりました」と答えれば良かったのに、なぜそうしなかったのだろうか。

また、上記の植草一秀氏のブログからの引用によると、アドバイザーのメリルリンチ日本証券は、おそらく売却額が109億円というように当初の予想の640億円よりもすごく低くなってしまったことから、売却中止も選択肢の一つとして日本郵政に提案していたらしい。だとすると、メリルリンチ日本証券は、なるべく売却額を高くしようと頑張っていたのだとしたら、アドバイザーとして、ある程度の仕事はやっていたということになるのかもしれない。

しかし、仮にそうだとしても、1.2億円の手数料と6億円の成功報酬も支払うような難しい仕事ではないだろう。79施設の一括売却なら簡単だが、個別売却の方法でも2年くらいかければ、日本郵政の従業員4-5人が専属になって回していけるような仕事だと思う。仮に5人が専属でやっても、1人の年収が1千万としても年間5千万円で済むような仕事だ。他に不動産鑑定の外注費は、1件が仮に100万円とすると79件で7,900万円、これに他の経費(弁護士による契約書のチェックなど)と前述の専任の従業員の人件費などを併せて、79施設の売却のためのトータルの経費は2億円は掛からないと思う。

追記(2008/4/8)

山崎元さんが2008/4/8付けのダイヤモンドオンラインの記事で、下記のような意見を述べているが、全く同感だ。雇用の維持に拘るから売却価格が安くなってしまう。赤字がどうしても解消しない個別の施設については、従業員には、2年分の年収と退職金をつけてでもいいから、退職してもらって、土地と施設だけの売却とすればよいのでは。その方が、金銭面では、トータルでプラスになるのは間違いないと思う。

「率直に言って、筆者は、この雇用維持への過剰なこだわりが、今回の問題の大元にあると思う。むろん、通った法律には、雇用に留意するという付帯条件が付いているし(雇用を未来永劫守れとは書かれていないが)、雇用に手を付けると事前に宣言していたら、現場の抵抗で、郵政民営化自体がうまくいかなったのかもしれない。当時者として民営化に苦労した人なら、そう言うのかもしれない。

 ただ、雇用の現状維持が一つの保証条件のような形になっていることが、民営化の不徹底を招いているのではないか。業績次第でリストラも減給もある民間企業のスタンダードとはあまりにもかけ離れている。これでは、郵政民営化は形だけの民営化で、実質的には「親方日の丸」の無駄を、そのまま国民に転嫁しているのではないか。「雇用を重視したから、売却条件が悪くなった」という言い分の意味はそういうことだ。」

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