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2010年4月28日 (水)

やはり「起訴相当」は検察審査会の「勘違い」による暴走だろう

小沢氏を起訴相当とした東京第5検察審査会の議決の要旨は次の通り(敬称略)。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100427-OYT1T01024.htm

 被疑者 小沢一郎

 不起訴処分をした検察官 東京地検検事 木村匡良

 議決書の作成を補助した審査補助員 弁護士 米沢敏雄

 2010年2月4日に検察官がした不起訴処分(嫌疑不十分)の当否に関し、当検察審査会は次の通り議決する。

 【議決の趣旨】

 不起訴処分は不当であり、起訴を相当とする。

 【議決の理由】

 第1 被疑事実の要旨

 被疑者は、資金管理団体である陸山会の代表者であるが、真実は陸山会において04年10月に代金合計3億4264万円を支払い、東京都世田谷区深沢所在の土地2筆を取得したのに、

 1 陸山会会計責任者A及びその職務を補佐するBと共謀の上、05年3月ころ、04年分の陸山会の収支報告書に、土地代金の支払いを支出として、土地を資産として、それぞれ記載しないまま総務大臣に提出した。

 2 A及びその職務を補佐するCと共謀の上、06年3月ころ、05年分の陸山会の収支報告書に、土地代金分が過大の4億1525万4243円を事務所費として支出した旨、資産として土地を05年1月7日に取得した旨を、それぞれ虚偽の記入をした上で総務大臣に提出した。

 第2 検察審査会の判断

 1 直接的証拠

 (1)04年分の収支報告書を提出する前に、被疑者に報告・相談等した旨のBの供述

 (2)05年分の収支報告書を提出する前に、被疑者に説明し、了承を得ている旨のCの供述

 2 被疑者は、いずれの年の収支報告書についても、その提出前に確認することなく、担当者において収入も支出もすべて真実ありのまま記載していると信じて、了承していた旨の供述をしているが、きわめて不合理、不自然で信用できない。

 3 被疑者が否認していても、以下の状況証拠が認められる。

 (1)被疑者からの4億円を原資として土地を購入した事実を隠蔽(いんぺい)するため、銀行への融資申込書や約束手形に被疑者自らが署名、押印をし、陸山会の定期預金を担保に金利(年額約450万円)を支払ってまで銀行融資を受けている等の執拗(しつよう)な偽装工作をしている。

 (2)土地代金を全額支払っているのに、土地の売り主との間で不動産引渡し完了確認書(04年10月29日完了)や05年度分の固定資産税を陸山会で負担するとの合意書を取り交わしてまで本登記を翌年にずらしている。

 (3)上記の諸工作は被疑者が多額の資金を有していると周囲に疑われ、マスコミ等に騒がれないための手段と推測される。

 (4)絶対権力者である被疑者に無断で、A、B、Cらが本件のような資金の流れの隠蔽工作等をする必要も理由もない。

 これらを総合すれば、被疑者とA、B、Cらとの共謀を認定することは可能である。

 4 更に、共謀に関する諸判例に照らしても、絶大な指揮命令権限を有する被疑者の地位とA、B、Cらの立場や上記の状況証拠を総合考慮すれば、被疑者に共謀共同正犯が成立するとの認定が可能である。

 5 政治資金規正法の趣旨・目的は、政治資金の流れを広く国民に公開し、その是非についての判断を国民に任せ、これによって民主政治の健全な発展に寄与することにある。

 (1)「秘書に任せていた」と言えば、政治家本人の責任は問われなくて良いのか。

 (2)近時、「政治家とカネ」にまつわる政治不信が高まっている状況下にもあり、市民目線からは許し難い。

 6 上記1ないし3のような直接的証拠と状況証拠があって、被疑者の共謀共同正犯の成立が強く推認され、上記5の政治資金規正法の趣旨・目的・世情等に照らして、本件事案については、被疑者を起訴して公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきである。これこそが善良な市民としての感覚である。よって、上記趣旨の通り議決する。

まず、この議決では、「5」で、「(1)「秘書に任せていた」と言えば、政治家本人の責任は問われなくて良いのか。(2)近時、「政治家とカネ」にまつわる政治不信が高まっている状況下にもあり、市民目線からは許し難い。」と言っている。

しかし、これは政治的主張と立法論に過ぎない。今の政治資金規正法では、政治家は秘書の「監督と選任の双方」に過失がなければ処罰されないと明記されている。それが不当だと思うなら、法改正を国会に働きかけるのが筋で、それをしないでいきなり起訴することは、法律が気にいらないから起訴するということと同じであり、罪刑法定主義を無視することで、暗黒社会になる。この議決は、「けしからん!」という感情にまかせて立法論と法解釈適用論を混同・勘違いして暴走している。

また、「6」で、 「・・・本件事案については、被疑者を起訴して公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべきである。」と言っている。

しかし、裁判は違法かどうか、有罪かどうかを法的に決するための場であり、真実を発見するための場ではない。

法廷では、有罪をどうかを決する必要がある限度において真実の発見が行われるだけだ。それは、例えば、被疑者の過去の経歴などが一般人の興味をそそった場合でも、有罪かどうかに必要な範囲を超えてそのようなプライバシーを含めた「真実」を法廷であばこうとすることはできないことからも明らかだろう。真実の発見は国会の国政調査権などでやるべきだ。「責任の所在を明らかにする」のも、法的責任は法廷でやるとしても、それ以外の「政治的・道徳的責任の所在」は国会や選挙でやるべきで、法廷に持ち込むべきでない。どういうメンバーが集まったのか知らないが、法廷の役割を「勘違い」しているとしか思えない。

また、「4」で、「4 更に、共謀に関する諸判例に照らしても、絶大な指揮命令権限を有する被疑者の地位とA、B、Cらの立場や上記の状況証拠を総合考慮すれば、被疑者に共謀共同正犯が成立するとの認定が可能である。」としている。

しかし、これも疑問だ。「共謀の事実」の認定の意味が分かってるのだろうか?

例えば「人を殺した」というのは抽象的事実で、それを直接に証明することはできず、必ず、それに当てはまる具体的事実(何月何日の何時ごろに何処でどういう状況でAの心臓を包丁で刺した、など)を提示して、それを立証する必要がある。

「共謀」というのも抽象的事実なのでそれを直接に証明することはできず、必ず、それに当てはまる具体的事実(何月何日の何時ごろに何処でどういう状況で「○○」と言ってAに指示した、など)を提示して、それを立証する必要がある。

今回の検察審査会が検証した供述証書には、そのような「具体的事実」が明記されていたのだろうか? また、そのような具体的事実を証明する証拠はあったのか? 極めて疑問だ。「議決書の作成を補助した審査補助員 弁護士 米沢敏雄」は、前述のような法律の適用と立法論の違い、共謀の事実の認定の意味などについて十分に説明したのか、極めて疑問だ。

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コメント

ひろ=寝たろう

「勘違い」=君たち無知な国民はワルクナイヨー(笑)

米沢弁護士が悪いんダカラネー(笑)

ほぉー、鳩山を不起訴にした検察審査会は不問だが、小沢起訴相当は許せんと(笑)

ひろ=寝たろう

投稿: Block60 | 2010年4月28日 (水) 11時01分

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