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2012年4月27日 (金)

東京地裁による小沢一郎氏への無罪判決について

昨日の東京地裁による無罪判決(陸山会事件)は、難しいですが、下記(追記2)に引用した判決の要旨を見たところでは、おそらく、

小沢氏は、客観的には虚偽であった記載そのものは秘書から報告を受けて知っていたと認定(推認)できるが、その秘書が行う記載が「真実ではない虚偽のものであるとの認識」が無かった可能性があるので、故意も共謀も認定できない、

つまり、故意のためには「違法な事実の認識」があればよく「違法なことをしようという意識(違法性の認識)」は不要なのですが、「(記載の内容そのものは認識していてもその記載の内容が)虚偽の記載である(又は記載すべき事項の不記載である)という事実の認識」が無かった可能性があるので、故意は認定できない、

つまり、「記載内容そのもの」は知っていただろう(推認で認定できる)が、「その記載内容が虚偽だ(又は記載すべき事項の不記載だ)ということ」までは知らなかった可能性があるので、故意は認定できない、

というものでしょう。

そもそも共謀共同正犯が成立するための主観的要件としては、

①故意があること(実行した正犯の行為の内容を認識していること、本件の場合は、政治資金報告書の記載内容を示す事実とその記載内容が虚偽であるという事実との双方の事実をいずれも認識していること)、及び、

②共謀があること(共謀とは、犯罪を共同で遂行しようという意思を合致させる謀議又はその結果成立した合意をいう。例えば、事実認識を共通にすることだけでなく、「動機の共有」も必要)、

の2つが必要だ。

そして、この判決は、あくまで、

小沢氏が政治資金報告書の記載内容を示す事実を認識していたことについては推認による認定が可能であるが、その記載内容が虚偽であるという事実を認識していたことについては推認による認定はできないという理由から、

「共謀はもちろん、故意さえも認定できない」と言っているのであり、

「故意は認められるが、共謀が認められない」と言っているのではない。

したがって、「故意と共謀との2つとも」が認められないのだから、有罪とは程遠いところにある訳で、控訴しても有罪となる可能性はほとんどないと言える。

僕は「秘書の行為は、単式簿記の理論からは正しい記載であり、期ズレなどはなく、虚偽記載には該当しない(法廷で証人に立った会計学の教授もそのように述べていた)」という理由で無罪にすべきと思っていたので、理論的には疑問をもっています。

追記1:本件無罪判決の意味について、適切に解説してる弁護士さんのブログを見つけたので、以下に一部引用しておきます。

まず、判決が認めた「うそ」の内容とは、小沢さんの資金管理団体「陸山会」の政治資金収支報告書について、【(1)元代表が04年10月に石川議員に手渡した4億円を記載せず(2)同月に土地を購入し代金を決済しながら05年分報告書に記載をずらしたこと】(毎日新聞クローズアップ2012 ※2)の2点だ。つまり、小沢さんが土地購入のために2004年10月に秘書に渡した4億円が陵山会の収入として記載されていないこと、(2)土地購入が実際には、2004年中になされていたのにもかかわらず、2004年度の報告書には記載せず、2005年度の報告書に記載した、ということだ。

※2 http://www07.mai.vip.ogk.yahoo.co.jp/select/opinion/closeup/index.html

(1)については、重要なポイントは、①実際に、土地購入のために使われた4億円はりそな銀行からの融資であったこと、つまり、小沢さん個人が出した4億円は支払いには使われなかったこと、②小沢さん個人が出した現金は、りそな銀行から融資を受けるための担保としてりそな銀行に定期預金とされたこと、③判決要旨(毎日新聞4月27日9面掲載)によると、「元代表は、04年分の収支報告書において、借入金収入として、りそな銀行からの4億円が計上される代わりに、自身の4億円は計上される必要がないと認識していた可能性がある」ということだ。

ちょっと、わかりにくいが、判決が指摘しているのは、【小沢さんは、自分が秘書に渡した4億円は自分名義でりそな銀行に預金され、それを担保としてりそな銀行から陵山会が、4億円を借り入れたと考えていた可能性がある】ということだ。

この点、上記毎日新聞は、より明確に判決を引用している(判決はまだ紙にはなっていないので、法廷でのメモによる)。【4億円についても「元代表が土地購入原資とならず、同額の銀行融資における担保(定期預金)となったと認識し、報告書への計上の必要性を認識していなかった可能性がある」と判断。「元代表が違法性を認識していたと断定できない」として、刑事責任を否定した。】

そうであれば、4億円は、陵山会の収入として記載する必要はまったくないことになる。あくまでも、借り入れを行うための担保として小沢さんが銀行に提供しただけということになるからだ。

ここで、預金を担保として借り入れをすることについて、不思議に思う人もいると思うので説明しておきます。つまり、「預金を担保に金を借りて土地を買うくらいなら、預金にする金で支払ってしまえばいいのではないか」という疑問に対する答えです。

手元の現金を支払ってしまうと、もう、その現金は、手元からなくなります。でも、担保として提供しておくだけなら、担保からはずせば、いつでも自由になるお金になります。今回のような不動産売買が典型です。良い不動産があるが、購入する不動産を担保として借り入れして購入するためには、銀行の決済で時間がかかるため、ほかの人に売られてしまう可能性がある。そこで、とりあえず、手持ちの現金(たとえば4億円)を定期預金にして、それを担保として現金(たとえば4億円)を借り入れして不動産の代金とし、後ほど、購入した不動産を担保とすれば、預金は担保からはずれるため、自由に使うことができるわけです。預金担保はすごく使い勝手がいいわけです。

というわけで、うその(1)については、預金担保の名義が「陵山会」ではなく、自分であると勘違いしていた可能性「など」(=ほかの説明もあり得ると思う)があるということです。というか、本来、小沢さん個人が担保提供するのであれば、小沢さん個人の名義で行うのが普通です。ですから、小沢さんがそのような誤解をしていた可能性はかなり大きいと思われます。

次に、うその(2)ですが、この点は、判決要旨(上記毎日掲載)に、「元代表は土地の所有権取得時期や残代金の支払い等の決済時期を含めた決済全体を遅らせるものとして報告を受け、認識していた可能性がある」としている。つまり、秘書らの報告自体が間違っていた可能性(あるいは誤解させるような説明ということだろう)があるということだ。これはそのとおりだろう。

この点も毎日はより明確な引用をしている。【石川議員は土地購入を05年分収支報告書に記載するため、実際の登記や代金決済日を05年に遅らせようと、元代表に説明した上で不動産業者と交渉。結果的に決済繰り延べに失敗し虚偽記載に至ったが、判決は「元代表がこうした経緯を正確に認識しておらず、支払いを(石川議員の説明通り)05年だったと思った可能性がある」と推認した。】

ここまで説明してようやく、なぜ、判決が、取引について報告・了承までは認めながら、違法性の認識がない可能性があるという判断をしたのか、ということの説明になるわけです。

追記2:本件無罪判決の要旨から、そのポイント部分(故意がないとした部分)を以下に、NHK NEWS Webより引用しておきます。

〔被告人の故意・共謀〕関係5団体における経理事務や日常的、定型的な取引の処理を含め、社会一般の組織関係や雇用関係であれば、部下や被用者が上司や雇用者に報告し、了承を受けて実行するはずの事柄であっても、石川元秘書ら秘書と被告人の間では、このような報告、了承がされないことがあり得る。
しかし、被告人の政治的立場や、金額の大きい経済的利害に関わるような事柄については、石川元秘書ら秘書は、自ら判断できるはずがなく、被告人に無断で決定し、実行することはできないはずであるから、このような事柄については、石川元秘書ら秘書は、被告人に報告し、了承の下で実行したのでなければ、不自然といえる。
本件土地公表の先送りや本件4億円の簿外処理について、石川元秘書ら秘書が、被告人に無断でこれを行うはずはなく、具体的な謀議を認定するに足りる直接証拠がなくても、被告人が、これらの方針について報告を受け、あるいは、詳細な説明を受けるまでもなく、当然のことと認識した上で、了承していたことは、状況証拠に照らして、認定することができる。
さらに、被告人は、平成16年分の収支報告書において、本件4億円が借入金として収入に計上されず、本件土地の取得及び取得費の支出が計上されないこと、平成17年分の収支報告書において、本件土地の取得及び取得費の支出が計上されることも、石川元秘書や池田元秘書から報告を受け、了承していたと認定することができる。
しかし、被告人は、本件合意書の内容や交渉経緯、本件売買契約の決済日を変更できず、そのまま決済されて、平成16年中に本件土地の所有権が陸山会に移転し、取得費の支出等もされたこと等を認識せず、本件土地の取得及び取得費の支出が平成17年に先送りされたと認識していた可能性があり、したがって、本件土地の取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に計上すべきであり、平成17年分の収支報告書には計上すべきでなかったことを認識していなかった可能性がある。
また、被告人は、本件4億円の代わりにりそな4億円が本件土地の購入資金に充てられて借入金になり、本件4億円を原資として設定された本件定期預金は、被告人のために費消されずに確保されると認識した可能性があり、かえって、本件4億円が、陸山会の一般財産に混入し、本件売買の決済等で費消されたことや、本件定期預金が実際には陸山会に帰属する資産であり、被告人のために確保されるとは限らず、いずれ解約されて陸山会の資金繰りに費消される可能性があること等の事情は認識せず、したがって、本件4億円を借入金として収支報告書に計上する必要性を認識しなかった可能性がある。
これらの認識は、被告人に対し、本件土地公表の先送りや本件4億円の簿外処理に関し、収支報告書における虚偽記入ないし記載すべき事項の不記載の共謀共同正犯として、故意責任を問うために必要な要件である。
このような被告人の故意について、十分な立証がされたと認められることはできず、合理的な疑いが残る。
本件公訴事実について被告人の故意及び石川元秘書ら実行行為者との共謀を認めることはできない。

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