使い捨て紙おむつ特許侵害訴訟で知財高裁が1億円の支払い判決
http://news.braina.com/2008/0419/judge_20080419_001____.html
「大王製紙(愛媛県)が、自社の紙おむつの特許権を侵害されたとして、王子ネピア(東京都)に約3億円の損害賠償を求めていた訴訟の控訴審判決で、知的財産高裁(飯村敏明裁判長)は4月17日、王子ネピアによる特許権侵害を認めた一審の東京地裁判決の結論を支持、約1億100万円の支払いを命じる判決を下した。問題となった特許1970113号「使い捨て紙おむつ」は、透水性シートと非透水性シートで吸水体をはさむ構造の紙おむつにおいて、ホットメルト薄膜により吸水体を縁の発砲体と離して固定し、尿の前後漏れを防止するもので、1987年に出願され1995年に登録されている。」
平成17年(ワ)第6346号損害賠償等請求事件の高裁判決です。
約1億円を稼ぎ出した特許はどういうものか、興味があって、大王製紙の特許1970113号(特公平6-22511号)「使い捨て紙おむつ」の内容を、IPDLで調べてみました。その請求項1は次のとおりです。
【請求項1】体液吸収体と、透水性トップシートと、非透水性バックシートとを有し、前記透水性トップシートと非透水性バックシートとの間に前記体液吸収体が介在されており、
前記体液吸収体の長手方向縁より外方に延びて前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとで構成されるフラップにおいて腰回り方向に弾性帯を有する使い捨て紙おむつにおいて、
前記弾性帯は弾性伸縮性の発泡シートであり、かつこの発泡シートが前記透水性トップシートと前記非透水性バックシートとの間に介在され、前記体液吸収体の長手方向縁と離間しており、
前記トップシートのバックシートがわ面において、体液吸収体端部上と発泡シート上とに跨がってその両者に固着されるホットメルト薄膜を形成し、
さらに前記離間位置において前記ホットメルト薄膜が前記非透水性バックシートに前記腰回り方向に沿って接合され、体液の前後漏れ防止用シール領域を形成したことを特徴とする使い捨て紙おむつ。
なんだか、難しそうですが、発明のポイントは、アンダーラインを引いた部分です。つまり、この特許の紙おむつは、透水性シート(下側の皮膚に触れる側)と非透水性シート(上側の皮膚に触れない側)という上下の2つのシートの間に発泡シートと吸水体とを介在させたサンドイッチ構造です。そして、発泡シートは、それぞれ前後方向(長手方向)の両端に配置され、吸水体は中央(2つの発泡シートの間)に配置されています。そして、発泡シートと吸水体との間は、離間させて、つまり少し離して、配置しておきます。そして、この離間した空間の上下を覆うように存在する透水性シートと非透水性シートとを、互いに近づけ接触させて、ホットメルト(接着剤)で互いに固定します(この固定した部分が、請求項1にいう「体液の前後漏れ防止用シール領域」となります)。以上が発明の構成です。発明の作用効果は、この固定した部分(「体液の前後漏れ防止用シール領域」)により、吸水体の位置ズレが起こり難くなり、且つ吸水体に吸収された体液が発泡シートの方から漏れることが無くなるので、体液の前後方向の漏れが防止される、ということのようです。
上はこの特許の図3ですが、符号の1が非透水性シート、2が透水性シート、3が吸収体、6が発泡シート、7がホットメルト薄膜、9が前後漏れ防止用シール領域です。
以上がポイントとすると、かなり細かい部分の「改良」ということで、基本特許とは言いにくいですね。この事件の第1審判決でも、この特許については、「前後漏れ防止について極めて顕著な効果を奏するものとはいい難い」「進歩性を有するものの、これと類似した構造を有する特許発明が出願時に複数存在していた」などと述べて、このような事情を考えれば、実施料率は比較的低いものとして認定されるべきで、「0.7%をもって相当と認める」、としています(第1審判決の124-125頁)。
基本特許ではないとしても、これで1億円とは、羨ましいですね。内容的にはローテクに入りますので、個人でも出願できるレベルの発明と思います。ただ、かなり細かい部分の改良なので、実際に製造している企業でないと、ここまでは、なかなか考えないでしょうね。
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