カテゴリー「面白い発明」の3件の記事

2008年8月 2日 (土)

福島智さんのお母さんの「指点字」の発明

今年6月下旬に放送されたNHK「課外授業・ようこそ先輩」だけど、録画してたのを最近になって見た。

東大先端科学技術研究センター准教授・福島智さん(45歳)が母校の小学校で行った授業だった。福島さんは3歳で片眼が失明し9歳で両眼とも失明。さらに18歳で両耳が聞こえなくなった。

両眼と両耳が使えなくなってからは、点字機を使って、お母さんが点字を打って、それを紙に凹凸を付けて印刷して息子の智さんに指で読ませていたのだけど、あるとき、智さんが自宅の台所で、お母さんに何かを聞いてきて、台所では点字機が無かったので、お母さんがとっさに、息子の手の指に、自分の指で字を打ってみた。そしたら、理解できた。それで、指点字が生まれた。

今では、その課外授業のときも、ボランティアの女性が、福島さんの隣に座って、ずっと、同時通訳のように、福島さんの指に自分の指で点字を打ち続けていた。福島さんのお母さん(福島令子さん)も授業に出ていて、指点字を思い付いたときのことを子供たちに話していた。

福島さんは、教室の子供たちに、指点字を教えて、隣の子同士でやらせた。子供たちの一人は「指点字は、指と指が触れ合うので、温かい感じがして良いと思う」と言っていた。

僕は、この福島さんのお母さんの指点字は、すごい発明だと思った。指さえあれば、紙やペンなども要らない。指と指が触れ合うことで人間的な温かみも感じられるので、コミュニケーション手段としては紙などよりずっと優れている。

この指点字の発明は、もし発明して直ぐに特許出願していたら、特許が取れただろうか?

答えはNOとされている。ジェスチャーとか手話とか方言とか挨拶とか言語などもそうだが、人間がやるコミュニケーションの方法は、単なる「人為的な取り決め」に過ぎず、「自然法則を利用したもの」ではない、だから、広い意味での発明には当たるとしても「特許法が定める発明」(狭い意味での発明)には当たらない、というのが特許庁や裁判所の解釈だ。

まあ、それはそうでしょうね。でも、そんなことはどうでもいい。福島さんのお母さんは、肩肘はらない、気さくで、堂々としてて、明るい感じの人だった。自由な雰囲気を感じた。こういう人は発明をよくするタイプではないかと思った。別に、特許が取れる発明だけが立派な発明だという訳ではないのだ。

追記ですが、福島さんは、子供たちに、「もし、皆が眼と耳が使えなくなったら自殺したいと思う?」と聞いていた。福島さんは自殺は考えなかったそうだ。「こういう苦悩は、人生で何らかの意味があるのだろうと思い込もうとした」と言われていた。「人生は生きているというだけで90%は成功しているようなものなのだ」とも言われていた。

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2008年6月15日 (日)

永久機関の発明? ウォーターエネルギーシステム

http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080612_wes/

「「ジェネパックス」という会社が、直接水を供給することによって発電する「ウォーターエネルギーシステム」というのを開発することに成功したそうです」

http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080612_wes_q_and_a/

「「水から電流を取り出すことを可能にした」という発表が本当ならまさにエネルギー保存の法則を打ち破る可能性のある永久機関、あるいはフリーエネルギー装置ができそうな勢いの「ウォーターエネルギーシステム」ですが、現場では各報道機関の人たちが代表取締役に山ほどツッコミを入れまくっていた」

GIGAZINEの2つの記事からの引用ですが、この技術「ウォーターエネルギーシステム」をマスコミ発表した企業(ジェネパックス)は、この技術などで大阪府から経営革新支援法経営革新計画承認企業の認定を受けているらしい。また、この技術は、テレビ東京のワールドビジネスサテライトやその他番組でも好意的に放映されたらしい。

しかし、これについては、もしアナウンスのとおりなら、擬似科学の一つである「永久機関」だという評価が多いようです。また、この技術の実態は、担体に固定された金属粉末を還元剤として水素を発生させるというタダの使い捨ての一次電池に過ぎないのではないか、という見方が有力のようですが、仮に、そのような使い捨ての一次電池なら、何kmか走って金属粉末(還元剤)を使い切ったら通常の乾電池と同じにその度に新しい電池を交換しなければならないのに、それを隠しているのは、ペテンに過ぎないということです。

永久機関とは、外部から何もエネルギーを受け取ることなく仕事を外部に取り出すことができる機関、と定義されています(第1種永久機関の定義です。他に、第2種永久機関もあります)。

例えば、「水の落下するときの重力エネルギーだけで水車を回し、その回転エネルギーだけで水を汲み上げ、再び水を落下させるという繰り返しで、水車を永久的に回す」という装置は、水をその高さまで持ち上げるためのエネルギーを外部から供給する必要があるので、不可能とされています。

また、「永久磁石の反発力だけを利用して永久的に動力を供給する装置」というようなものもよく提案されてますが、永久磁石の反発力を発生させるためには2つの磁石を近づけなくてはならず、その近づけるために外部のエネルギーを供給する必要があるので、不可能とされています。

特許庁でも、永久機関は、エネルギー保存法則に反しており発明として完成していないので、特許できないと言っています。そういうアナウンスをするほど、永久機関の発明の出願が多いということでしょう。もちろん、出願する人は、「これは永久機関ではない」と言ったり、「永久機関は実は存在する」と言ったりするのですが。

このジェネパックの「水から電流を取り出す装置」は特許出願もされているようです(弁理士が代理して出願しているようです)。

http://kantan.nexp.jp/pat_pdf/A/2006/14/2006244714.pdf

その特許請求の範囲は、次のようなものです。

 燃料極と酸素極を電解質を挟み対向配置させ、
 前記燃料極に純水を供給し、
 前記酸素極に酸素を供給し、
 前記燃料極および前記酸素極で発生する電気化学反応により、これらの極から直流電力を出力させ、
 前記燃料極として、ゼオライト、コーラルサンドおよびカーボンブラックの微粒子粉末の焼結体に白金が担持されたものを用い、
 前記酸素極として、ゼオライトおよびカーボンブラックの微粒子粉末の焼結体にルテニ
ウムが担持されたものを用いることを特徴とするウォーターエネルギーシステム。

この特許請求の範囲を見る限りでは、永久機関ではなく一次電池の発明だとするのなら、進歩性は別としても発明性は認められる可能性はあると思います。

この「ウォーターエネルギーシステム」が永久機関であることについては、次の掲示板の発言が適切と思ったので、引用しておきます。

http://atom11.phys.ocha.ac.jp/bbs01/msg.php?mid=26149&form=list

「>えと、これ永久機関ですか?

化学が好きでない人たちは「化学反応」というと何でも起こせそうに思うのですが、分子が反応して分子より安定な化合物になる反応は余分なエネルギーを取り出しながら反応させる事ができます。酸素分子と水素分子から水をつくる反応ではエネルギーが取り出せる訳です。でもその前段階に書いてある「化学反応」という部分は、分子より安定な化合物である水を酸素と水素に分けていますから、エネルギーをどこかから受け取らないと起こらない反応なんですね。という訳で、その「化学反応」を起こすのに必要なエネルギーをそのまま使った方が効率の良いシステムになるというだけなんですね。」

「フリーエネルギー」という言葉は、確か、10数年くらい前のバブルの頃かバブルの終わった頃に、船井幸雄さん(著名経営コンサルタント)の本などで、インドの行者(サイババ)が「日本製のメーカーのロゴの入った時計」を何も無い空間からポッと取り出したなどの話などと一緒に、盛んに紹介されていたのを思い出します。こういう話は、10年か20年に1回くらい、世の中に出てくるのですね。バブルやその他と同じで、皆が忘れた頃にまた誰かが引っ張り出してくるわけです。

永久機関などのエセ科学は、錬金術、M資金、バブル、ねずみ講、マルチ商法などと共通するものがあると思います。それは、人間の根源的な欲望や夢を刺激する幻惑性を備えていること、特に近視眼的になっている人たちには、そのロジックの中に巧妙に隠されているウソを見抜くことが難しいこと、などです。

数年前、たまたまだが、永久機関を30年以上、研究・試作しているという人に出会ったことがある。その人は、地方で、小さな鉄工所を経営していた。「後もうちょっとでできそうなところまでは、何回も行くんだけどね・・・」と言われてました。でも、その「後もうちょっと」が理論的に不可能なのが永久機関なのでしょう。

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2008年4月27日 (日)

未来の科学の夢絵画展

もう終わってしまいましたが、発明協会が毎年、小中学生を対象として行っている「未来の科学の夢絵画展」の入賞作品の展示が、東京上野・国立科学博物館で4月20日まであったようです。入賞作品の掲載は、発明協会のホームページでは見つかりませんでした。

僕は、入賞作品の絵を、発明協会からの「月報はつめい」で見ています。

実は、毎年、これを楽しみにしているのです。僕の老人になってからの夢は、NHKの「ようこそ先輩」のように、母校の小学校で発明の授業をしてみたいということです。

今年の入賞作品も、光ってるなと思えるものが沢山ありました。絵は出せない(著作権の問題から)のですが、特に、3点、気に入ったものがありました。

「かさ」 人の磁波に反応してその人の側で空中に浮いていて、持たなくてもさすことができる傘です。こういう、素朴な、一見すると誰でも思い付きそうな(でも、なかなか気づかなくて、目の付け所がポイントになっている)「コロンブスの卵」のような発明、こういうのは個人的に好きですね。

「気分に合わせて動く時計」 時間の進むスピードがその人の心の様子に合わせて変わる時計で、嬉しいときはゆっくりと、悲しいときは早く時間が過ぎていく時計です。何か、子供なりに、楽しいことや悲しいことがあって、そんなことを思ったのかな。

「絵本の中に入れるよズック」 その靴を履いて絵本の上に乗ると、そのお話の中に入ることが出来て、楽しくお話を味わうことが出来る靴です。これは、最近のバーチャル・リアリティの技術を使えば、近いうちに実現できそうですね。

毎年、思うのですが、やっぱり子供は発明の天才ですね。

発明家とは、大人になってもそういう「子供の心」を持ち続けている人なのではないか、と思います。

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