http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080612_wes/
「「ジェネパックス」という会社が、直接水を供給することによって発電する「ウォーターエネルギーシステム」というのを開発することに成功したそうです」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080612_wes_q_and_a/
「「水から電流を取り出すことを可能にした」という発表が本当ならまさにエネルギー保存の法則を打ち破る可能性のある永久機関、あるいはフリーエネルギー装置ができそうな勢いの「ウォーターエネルギーシステム」ですが、現場では各報道機関の人たちが代表取締役に山ほどツッコミを入れまくっていた」
GIGAZINEの2つの記事からの引用ですが、この技術「ウォーターエネルギーシステム」をマスコミ発表した企業(ジェネパックス)は、この技術などで大阪府から経営革新支援法経営革新計画承認企業の認定を受けているらしい。また、この技術は、テレビ東京のワールドビジネスサテライトやその他番組でも好意的に放映されたらしい。
しかし、これについては、もしアナウンスのとおりなら、擬似科学の一つである「永久機関」だという評価が多いようです。また、この技術の実態は、担体に固定された金属粉末を還元剤として水素を発生させるというタダの使い捨ての一次電池に過ぎないのではないか、という見方が有力のようですが、仮に、そのような使い捨ての一次電池なら、何kmか走って金属粉末(還元剤)を使い切ったら通常の乾電池と同じにその度に新しい電池を交換しなければならないのに、それを隠しているのは、ペテンに過ぎないということです。
永久機関とは、外部から何もエネルギーを受け取ることなく仕事を外部に取り出すことができる機関、と定義されています(第1種永久機関の定義です。他に、第2種永久機関もあります)。
例えば、「水の落下するときの重力エネルギーだけで水車を回し、その回転エネルギーだけで水を汲み上げ、再び水を落下させるという繰り返しで、水車を永久的に回す」という装置は、水をその高さまで持ち上げるためのエネルギーを外部から供給する必要があるので、不可能とされています。
また、「永久磁石の反発力だけを利用して永久的に動力を供給する装置」というようなものもよく提案されてますが、永久磁石の反発力を発生させるためには2つの磁石を近づけなくてはならず、その近づけるために外部のエネルギーを供給する必要があるので、不可能とされています。
特許庁でも、永久機関は、エネルギー保存法則に反しており発明として完成していないので、特許できないと言っています。そういうアナウンスをするほど、永久機関の発明の出願が多いということでしょう。もちろん、出願する人は、「これは永久機関ではない」と言ったり、「永久機関は実は存在する」と言ったりするのですが。
このジェネパックの「水から電流を取り出す装置」は特許出願もされているようです(弁理士が代理して出願しているようです)。
http://kantan.nexp.jp/pat_pdf/A/2006/14/2006244714.pdf
その特許請求の範囲は、次のようなものです。
燃料極と酸素極を電解質を挟み対向配置させ、
前記燃料極に純水を供給し、
前記酸素極に酸素を供給し、
前記燃料極および前記酸素極で発生する電気化学反応により、これらの極から直流電力を出力させ、
前記燃料極として、ゼオライト、コーラルサンドおよびカーボンブラックの微粒子粉末の焼結体に白金が担持されたものを用い、
前記酸素極として、ゼオライトおよびカーボンブラックの微粒子粉末の焼結体にルテニ
ウムが担持されたものを用いることを特徴とするウォーターエネルギーシステム。
この特許請求の範囲を見る限りでは、永久機関ではなく一次電池の発明だとするのなら、進歩性は別としても発明性は認められる可能性はあると思います。
この「ウォーターエネルギーシステム」が永久機関であることについては、次の掲示板の発言が適切と思ったので、引用しておきます。
http://atom11.phys.ocha.ac.jp/bbs01/msg.php?mid=26149&form=list
「>えと、これ永久機関ですか?
化学が好きでない人たちは「化学反応」というと何でも起こせそうに思うのですが、分子が反応して分子より安定な化合物になる反応は余分なエネルギーを取り出しながら反応させる事ができます。酸素分子と水素分子から水をつくる反応ではエネルギーが取り出せる訳です。でもその前段階に書いてある「化学反応」という部分は、分子より安定な化合物である水を酸素と水素に分けていますから、エネルギーをどこかから受け取らないと起こらない反応なんですね。という訳で、その「化学反応」を起こすのに必要なエネルギーをそのまま使った方が効率の良いシステムになるというだけなんですね。」
「フリーエネルギー」という言葉は、確か、10数年くらい前のバブルの頃かバブルの終わった頃に、船井幸雄さん(著名経営コンサルタント)の本などで、インドの行者(サイババ)が「日本製のメーカーのロゴの入った時計」を何も無い空間からポッと取り出したなどの話などと一緒に、盛んに紹介されていたのを思い出します。こういう話は、10年か20年に1回くらい、世の中に出てくるのですね。バブルやその他と同じで、皆が忘れた頃にまた誰かが引っ張り出してくるわけです。
永久機関などのエセ科学は、錬金術、M資金、バブル、ねずみ講、マルチ商法などと共通するものがあると思います。それは、人間の根源的な欲望や夢を刺激する幻惑性を備えていること、特に近視眼的になっている人たちには、そのロジックの中に巧妙に隠されているウソを見抜くことが難しいこと、などです。
数年前、たまたまだが、永久機関を30年以上、研究・試作しているという人に出会ったことがある。その人は、地方で、小さな鉄工所を経営していた。「後もうちょっとでできそうなところまでは、何回も行くんだけどね・・・」と言われてました。でも、その「後もうちょっと」が理論的に不可能なのが永久機関なのでしょう。
最近のコメント