カテゴリー「知財一般」の3件の記事

2009年11月15日 (日)

デジタル放送のみを受信できるDVDレコーダに関する私的録画補償金の問題

マイコミジャーナルの「関係者の合意がないまま課金できない - DVDレコーダ補償金訴訟で東芝が見解」(末尾に引用)などの記事によると、DVDレコーダは、もともと文化庁の省令に「補償金の対象機器」として規定されていたが、これが「ダビング10で複製が制限されたデジタル放送のみを受信できるDVDレコーダ」をも含むかどうかについて関係者間で論争があったところ、最近、文化庁の著作権課長が「含まれる」という文書を出したため、補償金を徴収しないとする東芝を権利者団体が訴えた、という経緯らしい。

文化庁の著作権課長が「含まれる」という文書を出したのは、もともと、文化庁は権利者側に立っていることから、そうなったのだろう。

東芝の主張は、補償金は私的な複製を(無制限に)我慢するしかない権利者のために認められたものだから、ダビング10で複製が制限されている機器は、補償金の対象機器に含めるべきではないということだろう。

逆に、権利者側の主張は、たとえダビング10があるとしても、9回までとはいえ、私的な複製を我慢しなくてはならないのは同じだから、他のDVDレコーダと同じように補償金を徴収すべきということだろう。

補償金の根拠規定は、著作権法30条2項(メーカーによる補償金の徴収は別の規定)。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
  一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
  二 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。


裁判所としては、もし東芝を勝たせる結論が妥当と思っても、文化庁の著作権課長の「含まれる」という政令の解釈を問題にしたくはないだろう。なぜなら、裁判所が文化庁の政令の解釈が間違いだいう判決を出しても、文化庁が新たに政令を改正すれば容易に判決をすり抜けられるので面白くないからだ。だから、裁判所は、著作権法の解釈でいくと思う。

そこで、著作権法30条2項は上のとおりだが、この文言からは、東芝はかなり苦しいのでは。

消費者として心情的には東芝に勝ってほしいが、著作権法30条2項の文言からは、権利者側の解釈になるのが自然で、東芝の主張に沿うような結論にするためには、相当、文言を限定的に解釈するしかないが、かなり苦しい。

また、権利者側の、ダビング10があっても9回までとはいえ私的複製を我慢しなくてはならないのは同じなので、他のDVDレコーダと同じように補償金が必要だという考え方も一理ある。これが1~3回くらいの複製に制限されているなら話はかなり違ってくると思うけど。

以下、マイコミジャーナルの「関係者の合意がないまま課金できない - DVDレコーダ補償金訴訟で東芝が見解」の記事の一部を引用。

東芝は11日、私的録画補償金管理協会(SARVH)が同社に対し、アナログチューナー非搭載のDVDレコーダへの「私的録画補償金」の支払いを求めて東京地方裁判所に提訴した件について、同社の見解を発表した。

私的録画補償金の支払いの根拠となっている私的録音録画補償金制度は、私的使用を目的とした個人または家庭内での著作物の複製について、一定の割合で録音録画機器のメーカーから補償金を徴収し、著作権権利者への利益還元を図ることを目的とした制度となっている。この補償金を巡り、文化庁では「私的録音録画小委員会」で議論してきたが、iPodなどの携帯音楽プレイヤーやHDDレコーダ、PCといった現行の補償金制度外の機器についても対象に含めるよう求める権利者側と、著作権保護技術の進歩を理由に同制度の縮小を求めるメーカー側の主張は大きく異なり、結局、結論は得られなかった。

今回問題になっているのは、デジタル放送のみを受信できるDVDレコーダに関する私的録画補償金。メーカーが消費者から徴収した補償金の支払いを受け、権利者に分配する団体である私的録画補償金管理協会(SARVH)は10日、補償金の支払いを求めて東京地方裁判所に提訴した。

東芝ではこれに対し、11日に同社の見解を発表した。同見解ではまず、従来のアナログ放送においては、「著作権保護技術が施されておらず、無制限にコピーが可能」(同社)なことから、アナログチューナーを搭載するDVDレコーダーについては、補償金の対象にすることで関係者間の合意がなされていたと説明。

だが、「現在のデジタル放送においては著作権保護技術(ダビング10)が施されてコピーが制限されているため、デジタル放送の記録に特化したアナログチューナーを搭載していないDVDレコーダーが補償金の対象か否かについては、消費者、権利者、製造業者など関係者の合意にいたらず、結論が得られていない」とし、アナログチューナー非搭載のDVDレコーダへの補償金課金は、関係者の合意が得られていないとの認識を示している。

同社ではこうした認識にもとづき、同社が販売しているアナログチューナー非搭載DVDレコーダー5機種については、発売当初から現在にいたるまで、購入者から補償金を徴収していない。(中略)

同社は、これらの機器において補償金を徴収していないことについて、「補償対象か否かが明確でない状況で補償金の徴収を行ない、その後、当該機器が補償金徴収の対象外とされた場合は、商品の購入者に対する補償金の返還が事実上不可能であることから、現状の下では、当該商品の購入者から補償金を徴収できないと考える」と、その理由を述べている。

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2009年8月 1日 (土)

ひこにゃん類似グッズ、これは不競法違反(5年の懲役)で、彦根市にチャンスだろう

ひこにゃん、困ったにゃん そっくりグッズ流通で」という記事。以下引用。

滋賀県彦根市のゆるキャラ「ひこにゃん」にそっくりなキャラクターのグッズが土産物店などで販売されていることが分かり、市は28日までに「著作権と商標権を侵害している」として、市内の6業者に販売中止を要請した。

そっくりキャラは、ひこにゃんを考案した大阪市のキャラクター作家の男性が手掛ける「ひこねのよいにゃんこ」。作者自身が別キャラをつくる珍しいケースに、市側は頭を抱えている

ひこにゃんは2007年開催の「国宝・彦根城築城400年祭」のキャラクター。男性の作品が公募で選ばれ、市が著作権を買い取り、愛称とともに商標登録した。

しかし、男性側は「ひこねのよいにゃんこ」のうち「座る」「跳ねる」「刀を抜く」の三つのポーズだけをキャラクターとして市に譲渡した、と主張。図柄の使用中止をめぐって調停を申し立てる騒ぎにもなり、結局、市側が販売業者らに3ポーズ以外のひこにゃんの使用を規制することで合意した。

一方、今年になって「にゃんこ」のぬいぐるみやクッキーなどが流通しているのを市が確認。市は「男性から事前協議がないままグッズが出回った。合意したのは絵本の出版などに限られるはず」と反発している。男性の所属する大阪市のデザイン会社は「にゃんこの創作活動は市も認めているはず」と反論しており、話は平行線のままだ。」(太字は当ブログによる)

彦根市と著作者の男性との合意内容は詳しくしらないが、この記事からは、おそらく、

(1)彦根市は、3つのポーズのひこにゃんについてのみ、グッズ販売を販売業者らに許諾できる、

(2)上記(1)の前提として、ひこにゃんの著作権は、彦根市に譲渡し、彦根市は、ひこにゃんの創作活動(絵本の出版など)を男性側に許諾する(又は、男性側が著作権を留保し、彦根市には、この3つのポーズのひこにゃんについてのみ、著作権を許諾する)、という合意なのだろう、と予想される。

もし、こういう合意なら、確かに、上記の記事での男性側の主張のように、「にゃんこの創作活動(絵本の出版など)」は、男性側に認められている。

しかし、「にゃんこのグッズ販売」は、「にゃんこの創作活動(芸術活動)」ではなく、ただの「商売」に過ぎないから、このような「にゃんこグッズの販売」は、上記の合意で認められた範囲内ではない。

このように、男性側の「にゃんこグッズの販売」が彦根市との合意で認められていないとすれば(そのような仮定を前提とすれば)、「にゃんこグッズの販売」は、彦根市の有名なひこにゃんキャラクタと酷似したキャラクタのグッズを販売して消費者を混乱させるものだから、不正競争防止法違反という5年以下の懲役に該当する行為になる可能性があるので、彦根市は刑事告訴や損害賠償請求などが可能だろう。

※不正競争防止法違反の類型の一つに、「他人の商品の外観表示で既に周知になっているものと類似する外観表示を使用した商品を勝手に販売する場合」というのがある(不正競争防止法2条1項1号)。

※男性側と類似グッズの販売業者とは、共犯・共同不法行為の関係になる。

つまり、彦根市のひこにゃんキャラクタを利用したグッズ販売は、既に彦根市が主導して広く知られている。そして、「グッズの販売」は、あくまで商売であって創作活動ではないから、「男性側に著作権(又はその許諾)がある」としても、「著作権(又はその許諾)がある」というだけで適法になることはない(適法とするためには彦根市との合意が必要)。したがって、男性側と彦根市との合意内容が上記のようなものだったとすれば、もし男性側に創作活動についての著作権の許諾があったとしても(又は男性側が著作権を留保していたとしても)、不正競争防止法違反になることに変わりはない。

※もし男性側が著作権を留保していたという場合、著作権はコピーする権利だから、文具などのグッズに自分の著作物をコピーするのは自由なので適法だろうという主張があるかもしれない。しかし、このような場合、ただの私権である著作権よりも不正競争防止法が優先するだろう。不正競争防止法は公共の経済秩序を維持するための法律だから。

彦根市は、頭を抱える必要は全くない。

むしろ、今回のことをチャンスとして、男性側に和解の交渉に応じるように呼びかけた方がよいと思う(交渉に応じなければ刑事告訴や損害賠償請求訴訟をしますよ、ということで)。つまり、今回の男性側のチョンボ(不正競争防止法違反)を逆手に取って、2007年の彦根市に不利な合意を修正するように交渉するチャンスがやってきたと前向きに考えるべきだろう(男性側が今回のグッズ販売で儲けた不当な利益も、損害の賠償として彦根市に吐き出すように、交渉の対象に入れるべきだろう)。

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2009年1月31日 (土)

テレビ放送番組の録画・海外送信サービスは著作権法上適法だとした知財高裁判決を見て

静岡県浜松市の「日本デジタル家電」による「ロクラク」サービス(日本国内のテレビ放送番組を受信・録画・送信する機器(親機ロクラク)をサービス提供者の会社内で設置・管理し、それを利用者に貸与し、利用者は、海外の子機ロクラクから日本国内の親機ロクラクを遠隔操作して好きな番組を録画して、それをインターネット経由で海外に送信させることにより、海外に居ながら日本のテレビ番組が視聴できるというサービス)について、利用者個人による適法な(著作物の)私的利用行為にすぎないから適法だとする知財高裁判決が出ました(平成20年(ネ)第10055号 平成21年1月27日知財高裁判決)。  

著作権については判決を読んだことはなく、カラオケ法理の判決の内容なども詳しくは知らないのですが、今回の判決は、ざっとですが、読んでみました。何故そういう気になったのかというと、この事件は、知財の専門家のほとんどが「日本デジタル家電が負ける」と、予想というか決め付けていました。そして「日本デジタル家電」という小企業を訴えた原告は、日本を代表するNHKと民放10社という、そうそうたる顔ぶれです。そういう知財業界や放送業界という既存のある種のエスタブリッシュメント層の予想・決め付けを見事に打ち砕いた判決だったからです。

こういう、「強い者が常に勝つとは限らない、小が大に勝つこともある」、というのが、裁判だけに限りませんが、勝負事の面白いところです。

中村修二氏の青色ダイオード訴訟で升永英俊弁護士と一緒に戦った荒井裕樹弁護士も「大きな人の味方して勝つのは、簡単なんですよね。弱い人を助けて・・・強い人に勝つということが弁護士の醍醐味だと思うんです。」と言っていました(以前にテレビの情熱大陸に出たとき)。

それで、この判決に、少し興味を持ちました。

この判決が扱った争点は唯一つ、「本件サービスにおいて、日本デジタル家電は、本件番組及び本件放送に係る音又は影像の複製行為を行っているか否か」ということです。つまり、親機ロクラクにより番組を録画・送信している主体は、実質的に見て、日本デジタル家電と利用者のどちらなのか、という問題です。主体が日本デジタル家電なら、複製権侵害と公衆送信権侵害になります。主体が利用者なら、その利用者の行為は著作物の私的利用に過ぎないので適法、日本デジタル家電の行為もその利用者の適法な私的利用の行為を支援するサービスをしているだけなのでこれまた適法、という論理になります。

これに関する判決の論理としては、僕の見たところ、4つくらいがポイントと思いましたので、この4つを、自分の備忘録としてですが、以下にコピーしておきます。これらを読んで感じたことは、この「番組録画送信(の支援)サービス」を適法とする結論は妥当だと思いました。ただ、この論理をそのまま貫くとカラオケボックスも適法となる可能性がある(そういう結論は妥当でない)ので、これこれの点で違うからカラオケボックスとは結論が異なってよいのだという論理を別個に用意しておくことが必要になるのではと感じました(おそらく、料金が定額か時間などによる従量制か、利用者の行為に対する店舗側の支配・管理の度合いの違いなどから結論が異なってよいということになるのでしょう)。

「イ 機器の設置・管理について
被控訴人らは,本件サービスにおいては,控訴人が,親機ロクラクとテレビアンテナ等の付属機器類とから成るシステムを一体として設置・管理している旨主張する。
しかしながら,被控訴人らが主張する上記事実は,控訴人が本件複製を行っているものと認めるべき事情たり得ない。その理由は,次のとおりである。
すなわち,本件サービスの利用者は,親機ロクラクの貸与を受けるなどすることにより,海外を含む遠隔地において,日本国内で放送されるテレビ番組の複製情報を視聴することができるところ,そのためには,親機ロクラクが,地上波アナログ放送を正しく受信し,デジタル録画機能やインターネット機能を正しく発揮することが必要不可欠の技術的前提条件となるが,この技術的前提条件の具備を必要とする点は,親機ロクラクを利用者自身が自己管理する場合も全く同様である。そして,この技術的前提条件の具備の問題は,受信・録画・送信を可能ならしめるための当然の技術的前提に止まるものであり,この技術的前提を基に,受信・録画・送信を実現する行為それ自体とは異なる次元の問題であり,かかる技術的前提を整備し提供したからといって直ちにその者において受信・録画・送信を行ったものということはできない。ところで,親機ロクラクが正しく機能する環境,条件等を整備し,維持するためには,その開発・製造者である控訴人において親機ロクラクを設置・管理することが技術上,経済上,最も確実かつ効率的な方法であることはいうまでもないところ,本件サービスを受ける上で,利用者自身が,その管理・支配する場所において親機ロクラクを自ら設置・管理することに特段の必要性や利点があるものとは認め難いから,親機ロクラクを控訴人において設置・管理することは,本件サービスが円滑に提供されることを欲する契約当事者双方の合理的意思にかなうものということができる。そして,そうであるからといって,前述したとおり,このことが利用者の指示に基づいて行われる個々の録画行為自体の管理・支配を目的とする根拠となり得るものとみることは困難であるし,相当でもない。
さらに,控訴人において親機ロクラクを管理する場合,控訴人においてその作動環境,条件等(テレビアンテナとの正しい接続等)を整備しない限り,親機ロクラクが正しく作動することはないのであるから,テレビアンテナ等の付属機器類を控訴人が設置・管理することも,本件サービスが円滑に提供されることを欲する契約当事者双方の意思にかなうものであることは前同様であるが,前同様の理由によりこれをもって利用者の指示に基づいて行われる個々の録画行為自体の管理・支配を目的とする根拠となり得るものとみることは困難であるし,相当でもない。
他方,本件サービスにおけるテレビ番組の録画及び当該録画に係るデータの子機ロクラクへの移動(送受信)は,専ら,利用者が子機ロクラクを操作することによってのみ実行されるのであるから,控訴人が親機ロクラクとその付属機器類を設置・管理すること自体は,当該録画の過程そのものに対し直接の影響を与えるものではない。
そうすると,控訴人が親機ロクラクとその付属機器類を一体として設置・管理することは,結局,控訴人が,本件サービスにより利用者に提供すべき親機ロクラクの機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境,条件等を,主として技術的・経済的理由により,利用者自身に代わって整備するものにすぎず,そのことをもって,控訴人が本件複製を実質的に管理・支配しているものとみることはできない。」

「オ 複製のための環境整備について
被控訴人らは,①本件サービスにおいては,子機ロクラクを用い,これが示す手順に従わなければ,親機ロクラクにアクセスしてテレビ番組の録画や録画されたデータのダウンロードを行うことができず,また,②控訴人は,親子機能を実現するための特別のファームウェアを開発して,これを親子ロクラクに組み込み,かつ,控訴人のサーバ等を経由することのみによって録画予約等が可能となるように設定しており,さらに,③親子ロクラクは,本件サービス又はこれと同種のサービスのための専用品とみることができる旨主張する。
しかしながら,これらの事情は,いずれも,利用者が親機ロクラクを自己管理する場合(控訴人が本件複製を行っているものとみることができない場合)であっても同様に生じる事態を指摘するものにすぎないから,これらの事情をもって,控訴人が本件複製を実質的に管理・支配しているものとみることはできない。」

「カ 控訴人が得ている経済的利益について
被控訴人らは,控訴人が,①初期登録料(3000円),②毎月のロクラクⅡのレンタル料(本件Aサービスにつき8500円,本件Bサービスにつき6500円),③毎月の「ロクラクアパート」の賃料(2000円)の名目で,利用者から本件サービスの対価を受領している旨主張する。
しかしながら,本件サービスは,機器(親子ロクラク又は親機ロクラク)自体の賃貸借及び親機ロクラクの保守・管理等を伴うものであるから当然これに見合う相当額の対価の支払が必要となるところ,上記(1)エ(ウ)によれば,上記①及び②の各金員は,録画の有無や回数及び時間等によって何ら影響を受けない一定額と定められているものと認められるから,当該各金員が,当該機器自体の賃料等の対価の趣旨を超え,本件複製ないしそれにより作成された複製情報の対価の趣旨をも有するものとまで認めることはできず(なお,被控訴人NHKの番組を視聴する場合には,上記の料金とは別に受信契約の締結が必要となる旨控訴人サイトに記載されている。),その他,当該各金員が本件複製ないしそれにより作成された複製情報の対価の趣旨をも有するとまで認めるに足りる証拠はない。
また,仮に,控訴人が上記③の金員を受領しているとしても,それが,「ロクラクアパート」の賃料の趣旨を超え,本件複製ないしそれにより作成された複製情報の対価の趣旨をも有するとまで認めるに足りる証拠はない。
以上からすると,控訴人が上記①ないし③の各金員を受領しているとの事実をもって,控訴人が本件複製ないしそれにより作成された複製情報の対価を得ているものということはできない。」

「キ 小括
以上のとおり,被控訴人らが主張する各事情は,いずれも,控訴人が本件複製を行っているものと認めるべき事情ということはできない。加えて,上記(1)のとおりの親子ロクラクの機能,その機能を利用するために必要な環境ないし条件,本件サービスの内容等に照らせば,子機ロクラクを操作することにより,親機ロクラクをして,その受信に係るテレビ放送(テレビ番組)を録画させ,当該録画に係るデータの送信を受けてこれを視聴するという利用者の行為(直接利用行為)が,著作権法30条1項(同法102条1項において準用する場合を含む。)に規定する私的使用のための複製として適法なものであることはいうまでもないところである。そして,利用者が親子ロクラクを設置・管理し,これを利用して我が国内のテレビ放送を受信・録画し,これを海外に送信してその放送を個人として視聴する行為が適法な私的利用行為であることは異論の余地のないところであり,かかる適法行為を基本的な視点としながら,被控訴人らの前記主張を検討してきた結果,前記認定判断のとおり,本件サービスにおける録画行為の実施主体は,利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず,控訴人が提供する本件サービスは,利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境,条件等を提供しているにすぎないものというべきである。」

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