カテゴリー「特許・知財戦略」の3件の記事

2010年1月29日 (金)

みずほ情報総研の知財セミナーがあるようです

最近は知財セミナーが多いのですが、その一つとして、特に参加費は無料ということなので、ご紹介させて頂きます。以下、引用です(みずほ情報総研の方には、以前、このブログのコメントで親切にご教授して頂いたことがありました)。

このたびみずほ情報総研では中小企業の経営や事業に貢献する知財戦略をテーマとした「知財戦略コンサルティングシンポジウム2010」を開催することになりましたので、ご案内いたします。

○知財戦略コンサルティングシンポジウム2010~中小企業における知財経営の定着に向けて~
http://www.mizuho-ir.co.jp/seminar/info/2010/chizai.html
○日時 2010年3月13日(土曜日)14時~17時30分(開場13時30分)
○場所 六本木アカデミーヒルズ 40階 キャラントA
○参加費 無料
○内容 中小企業における知財戦略の立案と定着に関する講演・パネルディスカッション
詳しくはホームページをご覧ください。

このシンポジウムの売りは、以下の5点です。

・中小企業における知的財産経営を「定着」という新たな観点から考え直すこと・「特定の事例を深く知りたい」という過去のご要望にお応えするため、田野井製作所様(東京都)のご協力を得て全社参加型(社長、役員、担当者)のパネルディスカッションがあること
※このような形式のパネルディスカッションは初めての試みと考えられます。
・田野井製作所様のほかにも知財戦略の支援事例を複数紹介すること(企業は2月下旬に公表予定です)
・的場成夫弁理士、鮫島正洋弁護士といった知財コンサルの第一線で活躍する専門家の講演と支援事例の解説があること
・開催曜日が土曜日なので企業勤務の方や地方の方も参加しやすく、会場も休日のカジュアルな雰囲気に相応しいこと

過去2年間のシンポジウムも各方面で大きな話題になりましたが、今年もおすすめできる企画になりました。
今後の中小企業における知的財産活動を考えるためのヒントをご提供できると思います。

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2009年3月21日 (土)

米国での集団訴訟とベルヌ条約の効力を組み合せたグーグルの知財戦略

2009/2/26付けで、「グーグルブック検索に関する米国集団訴訟の和解が日本の著作権者にも影響する」という記事がいろんなサイトで掲載されていた(例えば、この「知財情報局」の記事)。以下に、この記事を一部引用しておく。

「 書籍全文をスキャンしてデータベース化し、内容を検索できるようにしたサービス「グーグルブック検索」をめぐって、米国の作家協会と出版社協会などが米グーグルを著作権侵害で訴えていた集団訴訟が昨年10月に和解の合意に達し、今夏にも出される連邦裁判所の認可を待って発効する。その効力が日本の著作者にも及ぶとする法定通知が「グーグルブック検索和解」の専用サイトに掲載され、また2月24日のいくつかの新聞に掲載されて波紋を呼んでいる。

  この和解合意の対象は2009年1月5日以前に出版・公表された書籍で、和解が発効すると、同社は、(1) 著作権保護のために設立される非営利機関の費用3450万ドル(約32億円)を提供する。(2) 無断でデジタル化された書籍などの著作権者に補償金として総額4500万ドル(約42億円)以上を支払う。(3) そのかわり、同社は、絶版などで米国内で流通していない書籍のデータベース化を継続し、データベースアクセス権の販売や、広告掲載などの権利を取得する。(4) 対象書籍に関する同社の収益の63%は著作権者などに配分する。などのことが決められている。

  著作権者は、今回の和解合意に対して、(1) 同意せず、同社を訴える権利を保持する場合には、5月5日までに和解管理組織に書面で除外を申請する必要がある。・・・(以下略)」

これについて、あるブログ(社内弁理士のチャレンジングクレーム)の2009/2/25付けエントリ「Googleと集団訴訟(クラスアクション)とベルヌ条約」をみて、印象に残ったので、メモしておきたい。

このエントリでは、この和解について、次のような見方を述べている。

「・・・このGoogleの和解はクラスアクションという「取引コスト」の低減と、ベルヌ条約により世界163カ国の著作権を一気に捕捉するという戦略を組み合わせて「対価請求権化」と「取引コスト」の低減を大スケールで達成しようというものといえる。」

米国の制度は詳しくないが、米国の集団訴訟では、それによる和解や判決の効力は、その集団訴訟に参加していない人にも及ぶらしい(例外として、オプトアウトの方法で自分には効力が及ばないようにすることはできるらしい)。また、ベルヌ条約によれば、加盟163カ国のいずれかの国で著作権が成立すれば、全ての加盟国で同じ内容の著作権がそれぞれ成立することになる。

この米国での集団訴訟の効力とベルヌ条約の効力とを組み合わせることにより、グーグルは、米国で成立している全ての書籍に関する著作権(ベルヌ条約に加盟している外国に国籍または住所を持つ著作者が所有する米国での著作権をも含む)を、一網打尽に和解の網に掛けることができる(後は、オプトアウトにより集団訴訟の効力が及ぶのを拒否した著作者・著作物を個別に除外すればよいだけ)。そういう意味で、集団訴訟やベルヌ条約の効力をうまく利用し尽したグローバルでスケールのでかい戦略だということ。

これがグーグルの戦略だということは、グーグルは集団訴訟の被告になっている訳だが、米国の著作権者たちが自分を被告として集団訴訟をするように仕組んだということだろうか。まあ、そうなんだろう。

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マイクロソフトによるクロスライセンス契約の裏に隠されたLinux封じ込め戦略?

マイクロソフトは数年前から他社とのクロスライセンス契約を開始して既に数百社との契約にこぎつけている(最近ではブラザー工業など)が、その裏には隠されたLinux封じ込め戦略があると指摘している、あるブログ(社内弁理士のチャレンジングクレーム)の2009/3/10付けエントリ「MicrosoftとTomTomの訴訟とGPL違反」をみた。

このエントリは、「マイクロソフトが他社と積極的にクロスライセンス契約を推し進めている狙いは相手企業(ライセンシー)にGPL違反をもたらすような契約を締結してLinuxの頒布を制限すること」だと主張している。

すなわち、上記エントリの内容の一部を引用すると、次のとおりだ。

「GPLとはGNU General Public LicenseというOSSライセンスの最も有力なものの一つである。LinuxはGPLに基づいて頒布されている。(中略)Linuxを利用している企業はGPLのライセンシーである。

(中略)Samba(Linuxと同様に著名なOSS)の開発者Jeremy Allison氏(中略)は次のように言う。『この事件はクロスライセンスですべてうまくいくケースではない。TomTom(や他の企業)が特許クロスライセンスを締結すれば(Linuxカーネルが適用している)GPL v2の7条によってLinuxカーネルを頒布する権利を完全に失う。』

(中略)GPL v2の7条には『(中略)特許侵害あるいはその他の理由(特許関係に限らない)から、あなたに(裁判所命令や契約などにより)このライセンスの条件と矛盾する制約が課された場合(中略)もしこの契約書の下であなたに課せられた責任と他の関連する責任を同時に満たすような形で頒布できないならば、結果としてあなたは『プログラム』を頒布することが全くできない。例えば特許ライセンスが、あなたから直接間接を問わずコピーを受け取った人が誰でも『プログラム』を使用料無料で再頒布することを認めていない場合、あなたがその制約とこの契約書を両方とも満たすには『プログラム』の頒布を完全に中止するしかない(中略)』http://www.opensource.jp/gpl/gpl.ja.html

(中略)この条項から「特許ライセンスにより、GPLの条件と矛盾する制約を課せられた場合、頒布が全くできなくなる」ことが分かる。 GPLの条件とは例えば「複製・頒布するにはソースコードを開示しなければならない」という条件である(3条)。

(中略)結論としては「GPLの条件と矛盾する制約を課された状態でプログラムを頒布する」ことがGPL違反となる。

(中略)次にマイクロソフトの戦略について。マイクロソフトの狙いは特許クロスライセンス中にGPLの条件と矛盾する制約を入れることで、相手方がLinuxを頒布(販売)するとGPL違反になるように仕向けることだ。(中略)特許ライセンスに含まれるある種の制約は結果的にGPL違反をもたらす。マイクロソフトの狙いはライセンシーにGPL違反をもたらすような特許ライセンスの契約を締結することで、Linuxの頒布を制限し、Windowsの独占を維持することである。」

マイクロソフトがクロスライセンス契約を推進している目的の中で、リナックスの封じ込めがその全てではないにしても、その重要な狙いの一つなのだろう。そして、そのための仕込みは、2003年以降、既に数百社との契約にこぎつけている現在、十分な段階まで進んでいる。今までに同社とクロスライセンスをした企業の中には、この裏の狙いまでは気が付かなかったケースも多いと思われる。

私見だが、このような場合、パテントトロールに対して使おうと研究されている、権利濫用の法理(自らの特許権を公益に反する効果を狙って行使することは許されないという法理)を、マイクロソフトに対して使うことはできないだろうか?

リナックスは使用料無料であることから政府機関や後進国などで広く使われており公益に資するものと考えられるから、クロスライセンス契約をリナックスを封じ込めるため使うことは公益に反する目的で特許権を濫用することになる、したがって、マイクロソフトはクロスライセンス契約の中の条項を『GPLの条件と矛盾する制約』を課すような内容として解釈することはできないか又はそのように解せざるを得ない条項はその限りで部分無効(よって、このクロスライセンス契約の締結によって相手企業がGPL違反となることはない)、ということはできないだろうか?

追記(2009/4/9):

ブライナによる特許情報局からのメールマガジンによると、次のように、マイクロソフトとTomTomとの今回の訴訟を受けての和解契約では、「マイクロソフトの3件のファイル管理システム特許の適用範囲は、オープンソース契約である GPLv2に対するTomTomの義務を満足する」、つまり、『GPLの条件と矛盾する制約』は課されていないようだ。こういうことをわざわざ発表するということは、マイクロソフトのクロスライセンス契約の中に隠されてきたリナックス封止戦略が多くの企業に知られつつあるということだろう。

「特許侵害で争っていた米マイクロソフトとオランダのGPS端末メーカーTomTomは3月30日、両社が和解し、すべての訴訟を取り下げるとともにライセンス契約を結んだと発表した。

(中略)なお、和解契約では、マイクロソフトの3件のファイル管理システム特許の適用範囲は、オープンソース契約である GPLv2に対するTomTomの義務を満足するという。また、TomTomは今後2年以内に、マイクロソフトの2件のファイル管理システム特許( FAT LFN特許)を利用した機能を製品から取り除くことを約束し、それまでは、TomTomのエンドユーザーも契約の適用範囲に含まれるとしている。」

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